研究課題/領域番号 |
18K03080
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研究機関 | 白梅学園大学 |
研究代表者 |
廣澤 満之 白梅学園大学, 子ども学部, 准教授(移行) (30461726)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 同一性保持現象 / 自閉症スペクトラム障害 / 熟達化 / Challenging Behavior |
研究実績の概要 |
2018年度は、本研究の基礎となる文献のレビューを行ってきた。その過程の中で、以下の三点が明らかになり、今後の検討課題が示された。 第一は、「同一性保持現象の発達モデル」についてである。本邦においては鬼塚(1997),鬼塚(2005)のモデルがある。同一性保持現象と他の認知能力との関連を検討した研究としては、五位塚ら(2016)、石倉ら(2008)、香西ら(2007)を挙げることができる。これらの研究では、表象・対人的相互反応・言語能力との関連で検討が行われている。課題としては、より広範な自閉症の症状との関連で検討する必要が明らかとなった。 第二は、「同一性保持現象」の構成概念の問題である。以前より、欧米では障害児の問題行動をChallenging Behaviorとして捉える流れがある。欧米の複数の文献(たとえば、Matson,2016)を概観すると本研究の対象となる同一性保持現象はChallenging Behaviorに包括される。どのような行動を本研究の対象とすべきか改めて検討する必要があることが明らかとなった。 第三は、「支援者と保護者の熟達化モデル」である。ASD児・者の支援者の熟達化モデルはについては、「熟達化」として捉えられていないものの、松山(2016)などを挙げることができる。保護者の熟達化については、障害受容との関連で検討した。障害受容モデルは乳幼児期の子育てとの関連から検討されることが多い(たとえば、山本ら,2010)。しかしながら、いずれの研究も同一性保持現象に対する保護者の認識を明らかにするものではない。また、支援者と保護者の認識のずれに焦点を当てた研究は、ほとんど行われていなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、以下の4つの研究から構成されている。【研究Ⅰ】(質問紙調査):ASD児の同一性保持現象の発達モデルに関する研究、【研究Ⅱ】(面接調査):ASD児の同一性保持現象に対する支援者の熟達化過程、【研究Ⅲ】(面接調査):ASD児の同一性保持現象に対する保護者の熟達化過程、【研究Ⅳ】:保護者と支援者のASD児の同一性保持現象に対する理解の差異に関する研究である。 現在のところ、これらの研究の基礎となる文献レビューを終わらせている。この結果については、論文としてまとめている途中であり、2019年度に投稿するための準備を行っている。 また、【研究Ⅰ】(質問紙調査)の研究計画を立案しているところである。現在のところ鬼塚(1997)のモデル、海外の諸文献を参考にしながら、対象となる同一性保持現象を検討している。また、ASDの同一性保持以外の症状との関連を検討するための指標について検討を行っている。これらについての課題がクリアできたところで質問紙の構成にあたる予定である。 【研究Ⅱ】【研究Ⅲ】(面接調査)については、研究計画の立案を行っている。面接調査の方法についてM-GTAを使用することが妥当であると考えられた。分析テーマについては、すでに決定している。今後は、対象となる同一性保持現象の範囲を特定して、質問項目を選定していく。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、主として【研究Ⅰ】と【研究Ⅱ】・【研究Ⅲ】を進めていく。 【研究Ⅰ】については、質問紙調査の予備調査を8月に実施する。その結果を受けて、10月~1月にかけて本調査を行う予定である。調査結果は2020年度(2020年9月)の日本特殊教育学会第58回大会にて発表、ならびに2020年度に学会誌に投稿する予定である。 【研究Ⅱ】と【研究Ⅲ】については、6月~7月にかけて調査項目の選定を行う予定である。その後、【研究Ⅲ】について【研究Ⅱ】よりも先行してデータの収集を行う予定である。これは、【研究Ⅰ】の調査にて、【研究Ⅲ】の参加者を同時に募集するためである。【研究Ⅲ】については、2019年度内にデータ収集を終了する。2020年度に分析を行い、学会で発表する予定である。【研究Ⅱ】は、【研究Ⅲ】のデータ収集が終了した後に行う予定であるため、2019年度は調査方法の検討にとどめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、文献のレビューを行ったが、その整理のためのアルバイトを雇った。当初の予定よりも時間数が短く終了したため、想定していた金額を支出しなかった。次年度は、データの収集が始まるので、そのデータの整理にアルバイト謝金が必要となることが予想されるため、その部分に使用する予定である。
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