研究課題/領域番号 |
18K03080
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研究機関 | 白梅学園大学 |
研究代表者 |
廣澤 満之 白梅学園大学, 子ども学部, 准教授 (30461726)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 同一性保持行動 / 自閉スペクトラム症 / 発達過程 |
研究実績の概要 |
本年度は、後述の通り、二つの面接調査を行うことを予定していたが、感染症の拡大状況を受けて、参加者の募集が困難な状況が続いた。そのため、予定を変更して、同一性保持行動の発達過程に関するレビューを行い、質問紙調査の作成に関する検討を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。第一に、同一性保持行動の発達過程については、ASD児を対象とした事例研究などにおいて、他の行動と共に言及されているものの、同一性保持行動に焦点を当てた研究はほとんどないことが明らかとなった。特に、同一性保持行動をこだわり行動、常同行動、儀式的行動といったように、同一性保持行動の下位分類(機能)に着目せずに同一の概念として扱っていることが明らかとなった。第二に、同一性保持行動の下位概念に着目した研究は本邦には少なく、海外の研究ではその成果としてRBS-R尺度が開発されている。本邦では、これらの翻訳は行われているが、RBS-Rを実際に運用した研究はほとんどなく、特に発達過程を検討した研究は存在しない。したがって、本領域の課題としては、同一性保持行動の下位に位置付けられる機能に着目して、その発達過程を明らかにすることが重要であることが明らかとなった。特に、発達過程を検討する上で、縦断的研究は行われていないことから、幼児期・児童期のASD児に着目して、縦断的な変化を明らかにすることが必要であることが明らかとなった。また、発達過程に伴って、その保護者がどのようにASD児の同一性保持行動を捉えるのかについては、海外を含めて明らかにされた研究はほとんどない。この点が本研究におけるオリジナリティとなると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、同一性保持行動の理解過程に関する2つの研究を行う予定であった。第一は、ASD児・者を支援する福祉施設職員を対象とした面接調査であった。第二は、ASD児を育てた経験のある保護者を対象とした面接調査であった。これらについて、2020年の4月に所属する大学での研究倫理審査を申請して、5月には両研究の承認を得ることができた。しかしながら、新型コロナウィルス感染症の拡大によって、面接調査を行うことができる状況ではなくなった。その後、オンラインによる会議等の浸透によって、面接をすることができる状況が整いつつある。ただ、これらの研究を依頼する際には、参加者との信頼関係が重要であり、実際に福祉施設や親の会の会合などに訪問して参加者を募る必要があるため、訪問できない状況が継続している。今年に入り、実際に訪問できる状況が改善しており、第一の研究については、面接参加者を複数確保できている。今後は、面接調査の依頼を継続しながら、オンラインでの面接を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、同一性保持行動に関する理解過程を明らかにする2つの研究のうち、福祉施設職員を対象とした面接調査を行っている。本年度は、この研究のデータ収集・分析を第一に行っていく。また、同様にASD児を育てた経験を有する保護者を対象とした面接調査についてもオンラインでの面接を視野にして、参加者の募集・データの収集・分析を行っていく予定である。今年度は、これらの研究の結果をまとめて、2021年度3月に行われる学会での発表、論文の投稿を目指していく予定である。 また、これらの結果を受けてASD児を育てた経験のある保護者を対象として、同一性保持行動の発達過程を明らかにする研究を行う予定であった。しかしながら、全体として進捗が遅れていることから、本年度行ったレビューの結果を基にして、質問紙調査を行っていくこととした。本年度の7月を目途として、研究倫理審査の申請を行う予定である。申請が通り次第、質問紙調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、面接調査を行い、データの書き起こしに対する支出が多くを占める予定であった。また、データの分析・整理などについて、アルバイトを雇用する予定であったが、大学での業務が感染症対策の関係上困難であった。そのため、支出がほとんどない結果となった。
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