研究課題/領域番号 |
18K03080
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研究機関 | 白梅学園大学 |
研究代表者 |
廣澤 満之 白梅学園大学, 子ども学部, 准教授 (30461726)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 同一性保持行動 / 自閉スペクトラム症 / こだわり / 児童発達支援 / 保護者支援 / 困難感 |
研究実績の概要 |
児童発達支援センターに勤める指導員を対象として、自閉スペクトラム症児の同一性保持行動に対する理解に関する研究を行った。分析方法は、M-GTAを採用した。分析テーマは、「児童発達支援にたずさわる指導員は、同一性保持行動にどのような理解をしているのか」とした。特に、指導員が考える困難感や対応に関する考え方を分析した。 質問項目は、基礎情報に加えて、①同一性保持行動に対する理解、②同一性保持行動に対する困難感、③同一性保持行動に対する対応という点を尋ねた。 結果としては、3つのカテゴリー(①同一性保持行動への意味づけ、②困難感の変容、③保護者への対応)が見出された。①同一性保持行動への意味づけについては、理由を探索することの重要性に言及され、むやみに止めさせることは行動の見極めを困難にすること、行動の理由を複数挙げることの重要性について言及された。また、その他にも、他者とのコミュニケーションとして意味づけること、子どもが置かれる環境を視野に入れて長期的に意味づけることが挙げられていた。②困難感の変容については、初任期と現在の違いについて、同一性保持行動への対応に囚われる段階から、行動の文脈へと関心が広がっており、その背景には上司や先輩といった同僚の存在が寄与していること、チームとして子ども理解を深めていくことの重要性が述べられていた。③保護者への対応については、保護者との同一性保持行動への認識のずれがあること、保護者にモデルを示すことが重要であるが、そのためには同一性保持行動をネガティブな行動と捉えないことが重要であった。また、保護者のタイプによってどのような伝え方をするのかということが異なっており、特にこだわりがとけない、ネガティブな行動として意味づけている保護者に対しては、同一性保持行動に対する新たな対応の視点を具体的に子どもの行動の変化によって示すことが重要であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
児童発達支援に携わる児童指導員に対する面接調査を行っているが、分析が完了していない。現在、学会発表に向けて結果をまとめており、まとまり次第投稿する予定である。一方で、保護者支援に対する面接調査も開始しているが、昨今のコロナ禍によって対面での調査が難しいこと、対面での面接依頼ができないため、研究への参加承諾を得られにくい状況が続いている。本年度に入り、若干状況が改善しているため、引き続き面接調査の対象者を増やしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、同一性保持行動に対する①支援者の理解、②保護者の理解、③発達的変容過程についての研究から構成されている。①と②については、データの収集が行われており、本年度前半には終了すると思われる。③については、質問紙調査を検討しており、項目の設定などは終了している。今年度は倫理審査の申請を行い、②の研究と併せて、自閉スペクトラム症の親の会などを中心に依頼を積極的に行っていく予定である。これらの結果を受けて、①については学会発表の準備ができており(投稿中)、学会発表が終了次第論文を投稿する予定である。また、②については学会発表・論文投稿をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、想定よりも面接調査の回数が少なかったことが要因である。また、今年度は面接調査の回数が多くなるため、文字起こしの費用として多くが使用される予定である。また、質問紙調査の郵送、データのまとめに関する人件費として使用予定である。
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