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2022 年度 実施状況報告書

「立腰」姿勢の身体化認知の教育的応用に関する基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K03082
研究機関関西大学

研究代表者

菅村 玄二  関西大学, 文学部, 教授 (80511724)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2024-03-31
キーワード姿勢教育 / 立身姿勢 / 前傾姿勢 / イス / クッション / フォースプレート / 持続的注意
研究実績の概要

背筋を伸ばしやすいようにサポートする座面と背もたれのクッションを装着した「立身イス」を用いて実験を行った。これは姿勢研究では,「直立」姿勢と呼ばれ,背中を丸めた「前屈」姿勢よりも相対的にポジティブな感情価を示すことが判明している。一方,筆記するなどの作業時には,背中を丸めずに前のめりになる「前傾」姿勢のほうがバイオメカニカル的にも自然であり,この姿勢は注意や関心といったポジティブ感情を反映し,また生起させることも先行研究から示されてきた。そこで,2022年度は,立身イスのクッションを通常通りに装着して直立を促す「後傾座面条件」と,前後逆向きにして前傾を促す「前傾座面条件」と,同じ生地で平たいクッションを装着した「水平座面条件」を設定した。そのうえで,主観的な気分を評定させ,キーボードを用いた持続的注意課題を実施し,その成績と重心変化を指標とした。
その結果,条件間で有意差が認められたのは主観的気分のみで,前傾座面条件が他の条件に比べてポジティブな感情価を示した。注意課題および重心変化には有意差はなかったものの,注意散漫を表す指標は,前傾座面のほうが後傾座面条件よりも値が小さく,効果量も中程度に近い値を示した。いずれの結果も,前傾姿勢を促す前傾座面は,注意を要する課題には適していることを示している。サンプルサイズが小さく(11名),一般化については慎重を期す必要があるが,課題や作業内容に応じて「前傾」姿勢が適切な場合もあることが示唆され,その意味では,「良い姿勢」とは文脈依存的であることを示唆する結果と言える。立腰教育で協調される姿勢や立身イスがサポートする「直立」(立身)姿勢は,ある意味,姿勢を整える際のホームポジションであり,構成主義セラピーで強調ような座位姿勢の「センタリング」として捉えたほうが実際的かつ生産的ではないだろうか。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究1については予定通りに完了できたが,研究2はコロナ禍により小学校でデータを取ることができなくなり,研究3・4についても,シールドルームでの対面実験が行いにくい状況が続いていたため,計画通りに実験を進めることができなかった。2022年度は社会経済的状況も落ち着き,大学でも原則対面授業となったことから,少人数ながら個別の対面実験を行うことができた。もっとも,これまで実験が十分に行えなかったため,元々予定していた社会性に関する指標についてはまだ検討が進んでいないが,その代わり,立身姿勢を実現するクッションに関しては,当初の予定よりも詳細なデータを収集することができた。

今後の研究の推進方策

コロナ禍が落ち着いている間に,必要な実験を実施していきたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

本課題の研究期間は,使用予定であったイスの生産中止もあり,計画が当初から部分的に後ろ倒しとなり,その後は,コロナ禍により大学でもシールドルームでの安全な対面実験が行いにくい状況が続いていたため,予定していた研究が十分に遂行できなかった。2022年度は個別の対面実験を再開できたが,通常は立位で用いるフォースプレートの上にボード(床材)を敷き,その上にイスを置いて座位姿勢を計測するというイレギュラーなやり方を採用したことで,予期しなかったデータ計測上の不具合があり,その対応に多くの時間を消費した。
次年度は,フォースプレート以外の行動および生理指標を導入し,これまでに実施できなかった分の実験を行い,学会発表,論文執筆・投稿へとつなげていきたい。姿勢アセスメントに必要なタブレットやソフトウェアのほか,筋電計なども新たに購入するとともに,実験補助者や参加者への謝金,間に合えば,article processing chargeなどに使用することを検討している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 座面の傾斜が着席者の気分と注意および重心変化に与える影響2023

    • 著者名/発表者名
      菅村玄二・福市彩乃・崎田佑実
    • 学会等名
      日本心理学会
  • [学会発表] マインドフルネスからハートフルネス,そしてボディフルネスへ:東西の心身観の弁証法2023

    • 著者名/発表者名
      菅村玄二
    • 学会等名
      日本マインドフルネス学会

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公開日: 2023-12-25  

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