研究課題/領域番号 |
18K03084
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研究機関 | 帝京短期大学 |
研究代表者 |
橋本 泰央 帝京短期大学, 帝京短期大学, 講師 (50748267)
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研究分担者 |
小塩 真司 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60343654)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 対人 / パーソナリティ / 円環 |
研究実績の概要 |
本研究では(a)対人特性語に基づき, 日本人の対人特性の基本的な次元を明らかにすること,(b)対人関係のあり方と対人特性の関係を明らかにすること,(c)対人特性の二者関係研究への活用可能性を検討することを目的としている。 橋本・小塩(2018,日本パーソナリティ心理学会)では,辞書から収集した対人特性語(橋本,2018)をもとに,対人特性語が円環構造を示すかどうかを検討した。339語を対象に,792名の日本人大学生を対象に質問紙調査を実施し,主成分分析を行った。第1主成分,第2主成分からなる平面上(第2主成分までの累積寄与率70.1%)に対人特性語を布置すると円環状に分布した。 橋本・小塩(印刷中)では上記円環の構造をさらに詳しく検討した。すると海外の先行研究と同様に,支配性と親密性と解釈可能な,ほぼ直交する軸が確認された。この結果は日本でも海外と同様に,対人特性が円環で構造化できる可能性を示唆している。また支配性と親密性という,対人特性の捉え方の2次元が,文化を超えた,汎文化的性質である可能性を示している。過去の語彙研究で外向性に分類された語は海外での先行研究から推測された通り,支配性と親密性の軸の間(支配性(+),親密性(+)の領域)に分布したが,協調性に分類された語は先行研究とは異なり,親密性の語とほぼ重なって分布した(先行研究からは支配性(-),親密性(+)の領域に付置すると予想された)。先行研究との違いが,研究手続きやサンプルによる違いを反映しているのか,あるいは日本人の対人特性の特徴を反映しているのかは,今後も検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の目的は対人特性語に基づき, 日本人の対人特性の基本的な次元を明らかにすることであった。そのための方法として(1)質問紙調査と(2)書き言葉日本語コーパスを活用した分析を予定していた。(1)では上記概要に示したように,対人特性の構造を明らかにし,査読付き論文1報が受理され,国内外での学会発表も行うことができた(国内1報,海外1報)。2019年度7月の海外学会での発表1報も受理済みである。(2)については予定通りコーパスを利用して類似度情報を抽出することはできたものの,類似度抽出技法の問題(コーパス情報から人に関わる形容語を抽出する際に,いかに「人以外」のものを形容する語を除外するか)から,対人特性の構造の特定には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は対人特性の基本的な次元を明らかにした。2019年度は明らかにした対人特性次元を簡便に測定する尺度を作成する。また作成した尺度をもとに(1)質問紙調査,(2)インターネット調査を利用して,さまざまな対人関係(友人関係,親子関係,夫婦関係,恋人関係など)と対人特性の関係を検討する。また,(3)対人特性の観点から,さまざまな対人関係を構成する心理学的構成概念の整理を試みる。 コーパスを利用した対人特性次元の抽出については技術的な問題により当初の予定より遅れが出ている。未だ解決のよい方策が見出されていない状態であり,研究分担者と相談しつつ,方策を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
4月頭に行われた海外学会参加費の計上を次年度に繰り越したため,その分の費用が生じた。この費用は次年度に請求予定である。
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