本研究は,教育現場でも多く用いられている客観テストについて,問題形式・問題パターンに着目して問題項目が測定している能力を実証的に明らかにすることを目的とするものである。問題形式・問題パターンに着目した受験者の解答プロセスの調査・分析を行うとともに,部分点を与える場合の採点方法の検討も行う。 解答プロセスの調査については,平成29年に実施した実際の解答プロセスを記述させる調査及び平成30年度及び平成31年度大学入試センター試験モニター調査で実施した調査のデータの分析を進めた。平成30年度に実施したアンケート調査からは,グラフや表などの問題では,知識問題に比べて「自分なりに考えて判断した」と回答する受験生が多いことが示された。また,解答プロセスを記述させる調査について知識問題と思考力問題の2問を中心に分析を進めたところ,a)いわゆる知識問題であっても,知識だけでなく,推論を働かせる場合もあること,b)思考力問題では,解答過程は一つに限られず,何種類かのパターンがあることが示された。これらの成果を学会で発表したほか,論文としてまとめ,学会誌に発表した。 部分点を与える場合の採点方法については,正答選択肢が複数ある複数選択問題の採点方法について様々な場合の得点をシミュレーションを用いて示したほか,選択肢に重みを与える場合や並べ替え問題に応用した。これらの成果を学会で発表し,論文としてまとめた。また,設問解答率分析図と項目反応理論に基づく項目特性曲線とを比較する方法を提案し,学会で発表し,論文としてまとめた。
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