研究実績の概要 |
本研究の目的は、対人的楽観性に焦点を当てたメンタルヘルス改善のための統合的アプローチ法を開発し、その効果を検討することである。本研究で取り上げる楽観性(楽観的)という概念については、Abramson, Seligman, & Teasdale(1978)が、無力感の対応策として楽観的な期待の必要性を論じたことに端を発し、そのネガティブな側面も含め数々の実証的な研究がなされてきた(e.g., Boyer、2006;Seligman、1991;戸ヶ崎・坂野、1993)。Seligman & Csikszentmihalyi(2000)が提唱したことで知られる「ポジティブ心理学」の重要な概念であり、心身の健康回復やストレス緩和にプラスの影響を及ぼすとされる(e.g., 藤南・園田, 1994;Umstattd, McAuley, Motl, & Rosengren, 2007)。近年、各種健康障害のリスクファクターとして、メンタルヘルスの悪化が危惧されており(Murray & Lopez,1996)、二次的な問題も大きい(Jane-Llopis et al., 2003)ことから、メンタルヘルス改善の重要性は高い(e.g.,Gillham et al., 2000)ことが指摘されている。メンタルヘルス改善を目的としたプログラムは日本においても開発されており、一定の効果をあげている(e.g.,寺嶋他、2017;沢宮、2013)が、本研究では、人間の潜在的な可能性を拡げることをめざす、対人的楽観性に焦点を当てたメンタルヘルス改善のための統合的アプローチ法について検討を行っている。当該年度においては、これまでの研究で課題となったセラピーの脱落率を低めるため、動機づけ面接(MI)を導入し、その効果を明らかにする研究も継続して行っている。具体的には、変化への動機づけのアセスメントおよび動機づけ面接導入の効果について、明らかにする実験的検討である。
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