研究実績の概要 |
本研究の目的は、対人的楽観性に焦点を当てたメンタルヘルス改善のための統合的アプローチ法を開発し、その効果を検討することである。本研究で取り上げる楽観性(楽観的)という概念は、Abramson, Seligman, & Teasdale(1978)が、無力感の克服策として楽観的な期待の有効性を論じたことで注目され、実証的な研究が重ねられてきた(e.g., Boyer、2006;Seligman、1991;戸ヶ崎・坂野、1993)。心身の健康回復やストレス緩和にプラスの影響を及ぼすとされ(e.g.,藤南・園田, 1994;Umstattd, McAuley, Motl, & Rosengren, 2007)、Seligman &Csikszentmihalyi(2000)が提唱したことで知られる「ポジティブ心理学」のキーコンセプトでもある。また、動機づけ面接(Motivational Interviewing)とは、協働的なスタイルの会話によって、相談者自身が変わるための動機づけを高め、行動変容を促す方法である(Miller & Rollnick, 2013 原井他訳 2019)。動機づけ面接の効果については多くの実証研究がなされ、当初の対象であった飲酒や薬物使用だけでなく、喫煙、ギャンブル、健康増進、育児などの様々な行動について、有効性が示された(Lundahl et al., 2010)。「行動変容を促す」という特徴から,非常に汎用性の高い方法であるとされている(沢宮・佐藤、2023)。 本研究では、人間の潜在的な可能性を広げることを目的に、対人的楽観性に焦点を当てたメンタルヘルス改善のための統合的アプローチ法について検討した。当該年度においては、特に、統合的アプローチ法における「動機づけ面接」導入の効果を検討するため、前年度からの成果を引き継ぎ研究を進めた。
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