研究課題/領域番号 |
18K03090
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
山宮 裕子 お茶の水女子大学, 人間発達教育科学研究所, 研究協力員 (60575504)
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研究分担者 |
大森 美香 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50312806)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 妊娠 / 身体的な変化 / 嫌悪感 / 尺度の作成 |
研究実績の概要 |
平成30年度は主に、研究代表者と研究分担者により本研究の準備が行われた。本研究の最終目的は、妊娠中に起こる様々な身体的変化に対し妊婦が抱く嫌悪感と妊娠前のやせ理想の内面化ややせ願望、他人の容姿との比較がどのように関連し、また妊娠中の身体不満足感にどのような影響を与えるかの検証であるが、これは妊娠中の身体不満足感が妊娠中の女性の心身の健康や行動に悪影響を及ぼすことが危惧されるためである。しかし、妊娠中に起こる身体的な変化に対して抱く嫌悪感の程度を測定するための尺度が存在しなかったため、この尺度の作成が今年度の主な目標であった。 まずは妊娠中に起こる身体的な変化に関連する情報を収集した。具体的には、数か月以内に出産を経験した女性数名に妊娠中経験した身体的な変化を自由記述してもらい、その内容を基に身体的な変化のリストを作成した。さらに、妊娠を計画中もしくは妊娠初期の女性を対象として運営されているウエブサイトにおいて産科婦人科の監修のもと書かれている内容を参考に同様のリストを作成した。これらのリストを一つにまとめ20項目の質問を作成し、それぞれの身体的な変化に対しどのくらい不快に感じるかを測定することとした。この暫定尺度を、インターネット調査会社を通じ妊娠後期の20代の女性に配布し、404人分のデータを得た。このデータを解析・分析し、その結果16項目からなる新しい尺度を完成させた。 この尺度の使用により、妊娠中の女性がどのような身体的な変化に対し、どの程度の嫌悪感を経験しているかを測定することが可能となった。現在はこの新しい尺度の作成過程と解析・分析結果をまとめ、日本心理学会の学術集会での発表を目指し準備をしている。また、次年度より行われる本研究のデータ収集の際に使用する全ての尺度はすでにインターネット調査会社に提出をした。現在は研究機関の倫理委員会の承認を待っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の目標は本研究の準備であり、その目標は概ね達成できたと言えよう。具体的には、妊娠中に起こる身体的な変化に対し妊婦が抱く嫌悪感の程度を測定するための新しい尺度の作成という目標を予定通りに達成することができた。この尺度の作成の過程や分析の結果の論文化も順調に進んでいる。現在は、この予備調査の結果を今年9月に開かれる日本心理学会の学術集会で発表するための準備を整えている。 また、次年度(令和元年度)に本研究を実施するための準備は全て整えることができた。本研究に必要な尺度は全てインターネット調査会社に提出済みであり、いつでもデータ収集を開始することができる。 平成30年度内に研究機関の倫理委員会による本研究のデータ収集開始の承認を得られていないがこれは、予備調査のデータの中に解析に適していないデータが含まれていたため、インターネット調査会社に依頼し、追加のデータを収集していたためである。この追加のデータ収集を行った分本研究の倫理申請書の提出が少し遅れることとなったが、承認が下り次第データ収集を開始するため、平成31年度(令和元年度)の研究実施計画に影響はないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度(令和元年度)は、研究代表者と研究分担者により、主に本研究のデータの収集、解析・分析と論文執筆を行う。インターネット調査会社に委託し、日本全国の妊娠中の200人の女性を対象とし、遡及的および縦断的にデータを収集する。回答者は、令和元年5月から翌年3月までの期間に、妊娠初期(1~3ヶ月)、妊娠中期(4~6ヶ月)、妊娠後期(7ヶ月~出産)の計3回、オンラインで質問紙に回答する。収集したデータの予備解析を行った後、統計解析により仮説モデルの検証を行う。解析は、SEMによる潜在曲線モデリングを想定しており、統計ソフトウェアはSPSSを用いる。具体的には、妊娠前(青年期)のやせ願望、やせ理想の内面化、そして他人の容姿との比較傾向と妊娠中の身体的な変化への態度との関連、そして妊娠前の態度と妊娠中の身体不満足感の変化パターンとの関連を解析する。そして解析結果にもとづき論文執筆を行う。これらは全て、研究代表者と研究分担者により行われる。 最終年度の令和2年度は、研究代表者と研究分担者が、これまでに得られた調査結果を取りまとめ、国内外の学会において成果発表を行う(日本健康心理学会、6月;国際摂食障害学会、6月、オーストラリアなどを予定)。また、前年度までに執筆した論文を投稿する(Body Image、Fertility & Sterilityを予定)。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度後半に、研究代表者・研究分担者共に学術学会に参加し暫定的な研究成果を発表する予定でいたが、文献研究や尺度作成の段階で想定していたよりやや時間を要することとなったため当該年度の成果発表はできなかった。これは、最初のデータ収集の際に倫理委員会に申請書の提出し承認を得るのに時間がかかってしまったことと、さらに最初に調査会社から納品されたデータに解析に適さないデータが含まれていたため、調査会社に追加データを以来する必要が出てしまったためである。このことにより、データ収集が完全に終了したのが平成31年度1月になり、その成果発表は2年目(令和元年度)に行うこととしたためである。 また、新しい尺度の作成の項目を作成する際、産科婦人科数名に謝金を支払いインタビューにより妊娠中の身体的な変化に関する情報を得ることを計画していたが、産科婦人科の監修のもと運営されているウエブサイト上で必要な情報を得ることが可能であったこと、さらには日本産科婦人科学会が発行している診療ガイドラインが無料であったことから、今年度の謝金の支払いとそれに伴う旅費や人件費は不要になった。しかし、来年度以降、予定しているデータ解析を行う際、統計学者に指導を仰ぐことになり、そのための謝金として充当することとなった。
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