研究課題/領域番号 |
18K03093
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
森田 美弥子 中部大学, 人文学部, 教授 (80210178)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ロールシャッハ法 / 心理アセスメント / 心理臨床家の発達 / 心理臨床家の養成教育 |
研究実績の概要 |
投映法心理検査の代表であるロールシャッハ法には多くの指標があり、それをもとに量的分析を行うと同時に、反応とそれに伴う多様な言動を質的分析することが可能である。本研究では、ロールシャッハ法の検査場面での被検査者の(広義の)反応のどこに着目するか、そしてそこから何を読み取るか、について約60名の臨床家に調査を行った。着目内容の入力・分類等は既に済んでいる。臨床家の経験年数により3群に分けて、ロールシャッハ10枚の図版ごとにどこに着目し、どのように解釈するかを群間比較した。その結果、一部の図版において院生群(養成教育中)と中堅・熟練群との間で有意差が見られた。差が見られた図版については臨床家の回答(記述内容)をKJ法に準じて分類した。質的分析による比較では、中堅群と熟練群の間でも違いが見られた。テスティの反応等に対する着目点そのものは、一定の養成教育を受けた臨床家の中で大きな違いはないが、そこから意味ある解釈へと深めていくことについては経験が影響していることがわかった。表面的な特徴把握にとどまらず、支援かかわりに役立つ生きた解釈に結びつけるプロセスについての具体的内容は、現在考察をまとめているところであり、論文として発表を予定している。国内外の学会における心理アセスメントではWISC等の知能検査の研究が進んでおり、残念ながら投映法を用いたものは減少している。投映法によるアセスメントの精度を高めていくことと、それを学ぶことにより臨床家の人間理解の視点や技術の向上に資することができると考えられるので、データにより示していくことをさらに目標として本研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結果の分析を重ねてきた。質的分析の手法について改良を繰り返したため、投稿にまで至らなかったが、対象者(臨床家)の経験年数による相違の意味を考察する段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果について論文投稿を行う。「心理臨床学研究」誌を予定。その後に、他の部分(まだ分析していないデータ)の分析を続け、全体をまとめて臨床家の発達とそのための教育について提言を作成する。 共同研究で行っているが、新型コロナ感染症の影響で、頻繁に会合をもつことができず、分担して検討し、メールによる意見交換等で何とかこなしている状況である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に本研究に関する学会発表を行わなかったのが2019年度にも持ち越され、国際学会での発表と情報収集を行ったが、それでもなお次年度使用額が生じた。2020年度は新型コロナ感染症拡大防止政策の影響で多くの学会等が不開催となる予定であり、また外出・移動の自粛が要請されているため共同研究者との会合もままならない。それを補うために分析データの安全な送受信を可能にする保存ストレージと遠隔会議ツールを検討中である。また、文献資料の収集充実を図る。
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