研究実績の概要 |
認知症高齢者による自動車運転の事故が社会的な問題になって久しい。しかし実際には、健常高齢者が事故を起こす例も多発している。自動車による移動は他者との関りを維持する上で重要な役割を果たしているため、本研究課題においても注目している。高知工科大学朴啓彰客員教授、弘前大学大庭輝准教授、岩手医科大学山下典生准教授と共に、大脳白質病変の自動車運転技能への影響を調べる研究を2019年から開始し、2022年12月にScientific Reports誌に論文が採択された。本論文では、認知機能の影響を除外しても、白質病変が運転技能に直接的に影響していることを示した点を重要な成果と考えている。 加齢に伴う認知機能の低下に関しては、東洋英和女学院大学死生学年報、PHP研究所PHPBusinessThe21、兵庫県の人権ジャーナルへの寄稿、さらには、西東社刊『身近な人が認知症になったら』の監修、新書『マンガ認知症』の韓国版の発刊などを行った。また、今後の調査に用いるために社会的認知を測定する図版尺度をデジタル化した。いずれにおいても、認知機能低下者のコミュニケーションの重要性を指摘した。 知恵・英知・孤高に関しては、米国ノースイースタン・イリノイ大学Masami Takahashi教授を招聘し、日米比較研究の内容を日本発達心理学会監修「高齢期の発達科学」に寄稿するための打合せを行い、既に脱稿して、編集作業中である。 死生学に関しては、日本老年社会科学会第64回大会にて「介護職員の死に対する準備性と個人要因および施設要因との関連」を大阪大学久保田彩助教と共同でポスター発表した。なお本研究の前論文「久保田彩・佐藤眞一(2021).高齢者施設で看取る介護職員の悲嘆―死に対する準備性と看取りケア効力感に着目して―, 老年社会科学, 43 15-25.」は2022年度日本老年社会科学会論文賞を受賞した。
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