片頭痛や緊張型頭痛などの慢性頭痛にはストレスが関与することが分かっており,認知行動療法の適用例も少数ながらあるが,効果は一貫しない。これは,現行の頭痛に対する認知行動療法が,どのような要因が最も頭痛症状に対する予測力が高いのかという認知行動モデルに基づいていないという限界のためと考えられる。本研究では,慢性頭痛と関連の認められるうつ病と不安症に関する知見を基盤に,慢性頭痛の症状に対する予測力の高い変数を精査し,認知行動モデルを開発することを目的としている。 まず,縦断調査によって,大学生参加者の場合,抑うつが頭痛の症状を予測することが見出された。 やはり縦断調査によって,抑うつを予測する認知的な変数である反復思考と頭痛との関連を見たところ,反復思考が頭痛を増強する場合と,低減させる場合があることが分かった。これは,痛みから気晴らしをするためにあれこれ考えこむというように,反復思考が痛みへの対処として使われている場合もある可能性を示唆する。一方,反復思考が長引くことによって,一時的な痛みの低減を持続する心身への負担が上回ることによって,反復思考が頭痛の症状を増強するという結果が得られたと考えられる。 最終年度は,この仮説を検討するため,頭痛と反復思考をも含む上位概念であるマインドワンダリングの関連について調査を行った。その結果,マインドワンダリングの内容に応じて頭痛を抑制する効果と増強する効果がみられることが分かった。
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