研究課題/領域番号 |
18K03097
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
山下 光 愛媛大学, 教育学部, 教授 (10304073)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 臨床心理学 / 神経心理学 / 高次脳機能障害 / 社会的行動障害 / 空間性注意 / 利き手 / 利き足 / マインドフルネス |
研究実績の概要 |
2019年度は以下の研究を行った。 1)非言語性の記憶検査としてわが国でも多用されているRey複雑図形検査(RCFT)の反復実施による練習効果をコントロールするための代替刺激である改良版Tayler複雑図形(MTCFT)について、日本語使用者の基準データを収集した。収集は現在も継続中で、本年度中に20歳~80歳までの年代毎の実用的な基準データ表の完成を目指している。2)空間性注意のバイアスの測定方法として、反応の安定性や数量化の容易さから欧米での使用報告が増加しているgray scales taskに関する基礎研究を実施した。特に利き手と性差の影響に関するデータを追加して収集して再分析を行い、その成果を海外の学術誌に投稿中である。また、この課題を使用した空間性注意の加齢変化に関する研究では、新しい実験を追加して再分析を行った(進捗の遅れの理由に記載した研究)。現在改訂した論文を投稿準備中である。3)利き足の定義と測定法に関する複数の基礎研究(質問紙調査、実験室実験)を実施した。現在結果の解析を行っている。4)利き手と脳の機能、特に注意の障害との関係について実験研究を行った。研究成果の一部を学会で発表した。5)高次脳機能障害における社会的行動障害障害の実態について、当事者の家族へのインタビューを実施した(現在6名)。今後も収集を続け、具体的な問題行動への対処法も含めた分析を行い、それをもとに評価尺度や、家族用教材を作成する予定である。6)高次脳機能障害の当事者や家族の心理的ストレスへの対処法として、実施が容易な簡易型マインドフルネス瞑想のプロブラムの開発を行っている。大学生や精神科デイケアで予備的な研究を実施し、その中間報告を論文化した。 なお、これまでの研究助成で実施した神経心理学的検査の方法論や基準データに関する研究の成果を、異なる読者層が予想される2つの図書で紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
公認心理師資格に対応するための大学院の改組等で、会議参加、事務量、授業負担が急増し、研究に使える時間が不足した。また、海外の学術誌の投稿論文の審査で、アクション・エディターから、長期間にわたって何の反応もなく放置される事態が生じた。人種差別の可能性も含め、当該アクション・エディター、チーフ・エディター、出版社に再三の抗議を行ったが、当該アクション・エディターからは何の反応もなく、最終的にはチーフ・エディターと出版社からの謝罪のみであった。この研究に関しては、その間に海外からの関連論文が報告されたため、内容が古くなってしまった(当該アクション・エディターの意図的な妨害の可能性もある)。この研究はその他の研究を発表するための基礎データを扱ったものであり、この論文が公刊されていないために投稿が出来ない状態になっている論文が複数ある。そこで、実験を追加し新しい文献を含めた改訂論文を作成している。この論文が掲載され次第、他の関連論文を投稿出来るように準備している。現在遅れを取り戻す努力を続けているが、研究の実施や論文作成・投稿(審査・出版を含む)プロセスにCOVID-19の影響が生じてきている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に入ってからは、COVID-19の影響で研究の実施(実験、アンケート調査、インタビュー調査)が不可能になっている(実験室の使用も禁止されている)。また、学会発表等に関しても予定が立たない状態である。研究の最終年度でもあるので、今後はこれまで収集したデータの解析と論文の執筆・投稿に重点を置きたい。 上記の論文の再投稿以外に、現在以下の論文の作成が進行中である。 1)質問紙による利き足測定の信頼性と妥当性の検討。2)右足、左足のパフォーマンスの比較と、質問紙による。利き足との関係の検討。3)空間性注意のバイアスと成人の発達障害の特性の関係の検討。4)空間性注意のバイアスと利き足の関係。 これ以外の研究についても、出来るだけ速く論文化出来るように努力する。ただし、まだ十分なデータが集まっていない研究もあり、COVID-19の今後の影響については、現時点では予測が難しい。 また、リモート授業などの準備に多くの時間を割かれている現状もあるが、研究時間の確保についても出来る限り努力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
校務の多忙化により、研究時間の不足、研究に遅れが生じており、論文の投稿・出版(英文校閲、掲載料、別冊代)等の支出が少なかった。主要な研究の論文投稿に関するトラブル(理由不明の長期間の放置)に巻き込まれたことも関連論文を含めた投稿・出版の遅れに影響している。 また、校務の関係で役員として定期的に参加(発表)していた学会に参加できなかった。
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