研究課題/領域番号 |
18K03097
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
山下 光 関西福祉科学大学, 教育学部, 教授 (10304073)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 臨床心理学 / 神経心理学 / 高次脳機能障害 / 左右識別困難 / ゲルストマン症候群 / 利き手 / 性差 / 個人差 |
研究実績の概要 |
2022年度に関しても新型コロナ感染症の影響が大きく,研究活動は低調であった。大学生を対象としたデータ収集を再開したが,一般成人を対象としたデータ取集は停止したままであり,今年度中の再開を目指している。その一方で,これまでのデータの再解析と論文化を進めている。2022年度に公刊された論文は1報である。以下にその概略を紹介する。左右識別困難(left-right confusion)は,大脳左半球損傷によって生じることが知られており,ゲルストマン症候群の症状の一つでもある(手指失認,左右識別困難,書字障害,計算障害)。しかし,その一方で脳損傷が認められない健康な成人でも生じることから,その生起機序や神経基盤は不明な点が多い。さらに,女性に多いという説や,左利きに多い(あるいは少ない)という説もあり,ラテラリティ研究の見地からも注目されている。今回の研究では性別と利き手を統制した健常若年成人のサンプル(左利き女性,左利き男性,右利き女性,右利き男性各32名,年齢幅は18歳~40歳で,平均23.6歳,全員が大学生もしくは学校教員)に,自覚的な左右識別困難をたずねる質問紙と,左右識別能力を測定するMoney Road-Map Test (MRMT)を実施した。この研究によって得られた最も重要な知見は,健康な大学生や若手の学校教員の中にも,自覚的あるいは客観的に左右識別困難を示す者が,一定数存在することが確認されたことである。その中には客観的な指標であるMRMTで,極端に低い成績を示す者もあった。自覚的な左右識別困難は男性よりも女性に多い傾向がみられたが,客観的な指標である MRMTの正答率では男女差は認められなかった。また,利き手の効果は認められなかった。脳損傷患者や発達障害児・者に左右識別困難が認められた場合,その症状の解釈には慎重な態度が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度に関しても新型コロナ感染症の影響が大きく,実験・調査の中断(手続きに接近・接触を伴うため),学会等の予定変更などにより研究の進捗は低調であった。昨年度の論文発表は1本にとどまったが,現在2本の論文が作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度中に出来る限りのデータ収集(調査・実験)を完了させる。また,作成中の2本の論文を完成させる。その後もデータの分析と論文化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在作成中の論文が2本あり,その論文の公開(校閲料,投稿料,掲載料)に費用を使用したい。
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