研究課題/領域番号 |
18K03101
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
関山 徹 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (40363600)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 発達障害 / 共感 / 投映法 / 投影法 / 物語 |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症者における共感の構造をとらえるために、文献研究とデータの収集をしつつ、その分析と学会発表を行った。 データ収集に関しては、児童発達支援放課後デイサービス機関の協力を得て、自閉スペクトラム症の中学生を対象にして、TATと対人コミュニケーション質問紙(SCQ)、雨中人物画のデータを集めた。また、鹿児島県内において、定型発達の中学生のTATデータを収集した。 さらに、データの一部をパイロット的に分析して、日本ロールシャッハ学会と日本犯罪心理学会において発表をした。 前者における発表では、「関係性」のような積極的に意味づけていく必要のある側面では自閉スペクトラム症者は得点が低い傾向が明らかになった。また、感情等の表現を各カードにおける典型反応と比較すると、自閉スペクトラム症者では合致するものが少ない傾向にあることがわかった。しかしながら、「登場人物数」のような基本的な人物把握においては顕著な差は認められなかった。したがって、自閉スペクトラム症者では対人的関心の認知的側面はある程度保たれている一方で、能動的に対人的関心を向ける側面や情動的な側面は不得意とする傾向があると推察された。 後者における発表では、TATの分析精度を上げるため、鈴木(2012)が提唱する「関係相」分析の妥当性について、質問紙調査(MMPIおよびEAS)との相関分析を用いて検討を行い、その有効性が述べられた。また、今後の自閉スペクトラム症者のTATにおける共感の分析に活用できる道筋がつけられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献研究を行いつつ、データ収集を中心に研究を遂行した。具体的には、広島県・埼玉県・愛知県に所在する児童発達支援放課後デイサービス機関の協力を得て、自閉スペクトラム症の中学生を対象にして、TATと対人コミュニケーション質問紙(SCQ)、雨中人物画のデータを収集した。また、鹿児島県内において、比較群としての定型発達の中学生のTATデータを収集した。データ分析はTAT反応を中心に進め、日本ロールシャッハ学会と日本犯罪心理学会において、口頭発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
文献研究を深めつつ、自閉スペクトラム症者のデータの追加収集を行う。また、TAT反応の分析をより詳細に行うだけでなく、対人コミュニケーション質問紙(SCQ)や雨中人物画の結果の分析を進め、相互の関連についても探っていく。対象者に対しても、中学生だけでなく、大学生のデータの追加を行う。自閉スペクトラム症者の支援者に対するインタビュー調査等も実施する。 そして、学会発表に備えるための分析をしながら、共感の構造をとらえるための指標の開発を進める。また、既有の他の精神疾患データとの比較分析も行う。
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