高校生のメンタルヘルス向上をテーマにした研究を実施した。コミュニケーションスキル尺度(通称ほっと)を作成し、他の認知尺度(肯定的再評価尺度)や感情状態の尺度を組み込んだバッテリーによって調査を実施すると、いわゆる社会情動的スキルの向上によって、高校生のメンタルヘルス向上が確認され、自殺予防対策として有効であるという結論を得た。また、高校生のストレス対処能力を向上させるために、オリジナルのストレッサー尺度を組み合わせた新しいアセスメント技法の提案と認知行動的内容の心理教育によるメンタルヘルスの改善、援助要請行動の向上などを報告できた(日本カウンセリング学会、日本教育心理学会等)。加えて、それらの支援に対する低反応性の生徒の特徴を食事栄養面から分析するために、栄養状態(エネルギー、脂質、食物繊維、カルシウム、鉄、亜鉛、ビタミンB1、ビタミンC、ビタミンD、食塩相当量)とメンタルヘルス、社会情動的指標との関係を分析した。コミュニケーションスキルの高低は、行動活性度や抑うつ傾向と明瞭な対応関係を示すが、エネルギー、脂質、食物繊維、カルシウム、鉄においても有意な関係が確認された。この5つの栄養素の摂取状況を統合した代表値を算出し、栄養状態の過・適・低群に分けほっとの代表値を高中低群に群別したデータを用いて多重対応分析を行った。2次元(累積寄与率.62)の散布図に対して、統合栄養指標の低群~高群にコミュニケーション力の低~高群が同伴するプロットが得られた。すなわり栄養摂取の状態はコミュニケーションの状態に関連を有し、行動活性度にも影響を与えていた。栄養教育コンテンツの視聴と認知行動療法をベースとした心の健康教育プログラムの実施は、栄養状態の改善に加えて、コミュニケーションスキルの関係維持、仲間強化、自己統制、援助要請と、行動活性度、抑うつの改善に寄与していた。
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