研究実績の概要 |
わが国の犯罪動向(平成29年版犯罪白書)を見ると、刑法犯検挙者数は漸減しているが、再犯者率は一貫して上昇している。したがって、再犯の防止は更生保護・矯正研究において重要な問題となっている。こうした再犯の現状を改善するために、国は、民間とともに、仮釈放者や保護観察処分少年などの就労確保と安定した生活場所の確保を目的として、自立更生促進センターあるいは更生保護施設への支援などを行っている(法務省ホームページ, 2019)。しかしその数は十分ではなく、自立更生促進センターや更生保護施設などのあらたな開設が求められている(法務省ホームページ, 2019)。一方、こうした施設の開設が地域住民によって理解、支持されることは極めて難しい (日本経済新聞, 2012など)。したがって、更生保護施設などの建設に対する地域住民の理解を促す要因を明らかにする研究は、再犯防止、犯罪抑止にとり重要な意味を持つ。 にもかかわらず、この種の研究は、我が国では少ない(渡部と小俣, 2012、横田, 2012)。このような問題意識から、筆者らは更生保護施設に対する地域住民の拒否的態度に係わる要因に関する調査を行った。 調査は、調査会社に登録された回答者、1000名(男女各500名、20歳以上70歳未満)を対象に行われた。その結果、地域住民の更生保護施設受け入れを促すには、入所者の再犯に対する十分な対応と、住民の不信感を解消することが重要であることが示され、問題解決のための一定の方向性が示唆された。 昨年度は、これらの研究成果の学会や論文発表をまず、行った。それと並行して、既存の更生保護施設の開設時の市民との関係の状況、現時点で、更生保護施設が、先の市民調査で明らかとなった市民の不安に対して、どのような対応を行っているのかを明らかにすることとした。昨年度は、その調査の準備として、質問項目の検討を行った。
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