研究実績の概要 |
現在、再犯の防止は更生保護・矯正研究において重要な問題となっている。こうした現状を改善するために、国は自立更生促進センターあるいは更生保護施設への支援などを行っている。しかしその施設数は十分ではなく、またこうした施設の開設が地域住民によって理解されることはない。したがって、更生保護施設などの建設に対する地域住民の理解を促す要因を明らかにする研究は、再犯防止にとり重要な意味を持つにもかかわらず、研究は少ない。 このような問題意識から、筆者らは2018年度には更生保護施設に対する地域住民の拒否的態度に係わる要因に関する調査を行った。調査は、男女各500名、20歳以上70歳未満の一般市民を対象に行われた。その結果、地域住民の更生保護施設受け入れを促すには、入所者の再犯に対する防犯措置と、住民の不信感の解消が重要であることが示された。また、これらの研究成果の学会(日本心理学会第83回大会,2019、日本犯罪心理学会第57回大会,2019)や論文発表(駿河台大学論叢, 2019,vol59)を行った。 2020年度では既存の更生保護施設の開設時の市民との関係の状況、現時点で、更生保護施設が、先の市民調査で明らかとなった市民の不安に対して、どのような対応を行っているのかを明らかにすることとした。方法としては、全更生保護施設を対象に質問紙調査をおこない、結果を日本犯罪心理学会において発表した(日本犯罪心理学会第58回大会,2020)。また、前年度の市民調査の結果を論文化した(犯罪心理学研究,2021,vol58)。また、さらなる調査または更生保護施設に対する聞き取り調査を実施する予定であった。しかし、新型コロナの感染拡大により、これらの調査が実施困難となった。したがって、調査期間の延長を申請し、これらの研究活動を継続することとした。
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