研究課題/領域番号 |
18K03113
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
西村 馨 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (70302635)
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研究分担者 |
上地 雄一郎 岡山大学, 社会文化科学研究科, 特命教授 (80161214)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 愛着の課題 / メンタライジング / 児童・思春期 / グループセラピー / MBT-C |
研究実績の概要 |
1.グループで児童のメンタライジングを促進をすることで、メンバーがメンタライジングしあうようになるプロセスを描き出した(木村能成・那須里絵・西村馨(2020)子どものグループセラピーにおけるメンタライジングアプローチの意義-アタッチメントに課題を持つ子どもの成長に向けて-.集団精神療法 36(1),95-104.) 2.虐待経験が、グループで独特な隔絶感として現れ、それを克服するプロセスを検討した。(那須里絵・岡本美穂・西村馨(2020)児童虐待による『隔絶感』の克服に貢献する思春期女子グループの意義.精神療法46(4),83-92.) 3.サブカルチャーへの没入が、グループで修復されるプロセスを見出した。(那須里絵・西村馨(2021)孤独感を抱えた思春期女子へのグループセラピー:サブカルチャーから生の人間関係へ.思春期青年期精神医学 30(2),120-131.) 4.思春期の子どもがグループで心理的作業を行うための構造と手法を整理した。(那須里絵・西村馨(2021)グループセラピーの方法論-現代思春期の心理的発達を支援する方法として-.教育研究[ICU教育研究所] 63,113-122.) 5.子どもを対象とした「メンタライジングに基づく治療」、“MBT-C” の標準的手法として体系化されたMidgleyらの著書(Midgley, N. et al. (2017) Mentalization-based treatment for children: A time-limited approach. American Psychological Association.)を翻訳し、日本の臨床家とともに学べる土台を整備した(上地雄一郎・西村馨(監訳)石谷真一・菊池裕義・渡部京太(訳)(2021)メンタライジングによる子どもと親への支援:時間制限式MBT-Cのガイド 北大路書房)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績に述べたように、これまで実践してきた「愛着の課題」を持つ児童・思春期のグループセラピーの方法論、治療プロセス、技法論については、その成果を報告することがかなりできたと考えている。ともに実践しながら研究してきた協力者が、成果を積極的に形にできるようになったことは大変喜ばしいことである。 また、研究分担者とともにMBT-Cの標準テキストを翻訳できたこと、これに関わる学術会議、学術交流が展開したことも大変喜ばしい。 しかしながら、研究全体の目的を考えるとき、施設においての臨床介入が展開できなかったことが最も懸念される部分である。これについては、やはりコロナ禍の状況において、施設へのアプローチが難しくなったことが大きな原因であると言わざるを得ない。また、コロナ禍で生じた様々な業務が研究時間をひっ迫させ、精神的摩耗を生じさせたことも事実である。
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今後の研究の推進方策 |
施設介入を行っていくためには、①アセスメントツールの構成、②施設スタッフとの予備的交流、対話、および施設の観察、③臨床介入の計画を準備していく必要がある(その後、介入の実践、データ分析、考察という作業が続くことになる)。現時点では、①の作業の途中にあり、②と③についてはこれからという状況である。しかしながら、このコロナ禍において、何をしていくことが具体的に有益であるのか、可能であるのかと検討し、その制約の範囲内で行わねばならない。今後の推進方策として、以下のことを考えている。 1.当初介入予定であった施設スタッフとの交流を開始し、現時点で必要な子ども(およびスタッフ)への介入についての聴き取り、交流、今後の展望についての会合を行う。 2.それを踏まえて、介入計画と測定ツールの整備を行う。おそらく、長期的な介入ではなく、短期的な介入とする一方で、組織のスタッフとの「横の」つながりを増やしていくことが有意義であろうと思われる。また、直接(対面)での介入のみならず、テクノロジーを媒介とした介入の方法も検討する必要があると思われる。 また、施設以外にも、当方の研究施設を基盤として、参加可能な地域の方々への臨床サービスを、研究プロジェクトにからめて展開させていくことも有益および必要であると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会への参加および海外研究所での研究集会・研修会への参加を予定していたが、コロナ禍でキャンセルとなり、渡航費を使わなくなったため。また、臨床施設を訪れて情報収集、研究交流を行い、そのデータを分析する予定であったが、実施不能となったために交通費、人件費が未使用となった。 今後、海外渡航は無理であっても、オンラインでの研究交流を行うとともに、データ収集のための機材を購入し、収集されたデータの分析を行っていく予定である
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