研究課題/領域番号 |
18K03116
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
安田 節之 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (00434340)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プログラム評価 / ベストプラクティス / プロセス評価 / TQM / ベンチマーキング / 対人・コミュニティ援助 / 心理教育プログラム / ライフキャリア支援 |
研究実績の概要 |
本研究は,ベストプラクティス・アプローチ(BPA)に基づくプログラム評価の方法論を検討することを目的としている。エビデンスベースド・アプローチ(EBA)の重要性が多くの領域(例:社会科学)で指摘されるなか,その主たる方法論である実験デザインを活用したプログラム評価の実践には,様々な課題が存在する。多くの対人・コミュニティ援助プログラム(例:心理教育プログラム)において比較群の設置や無作為化の実施が技術的・倫理的に困難であるという課題である。そこで本研究では,EBAの課題を補完するためのBPAの評価研究のあり方を検討している。
2019年度は,経営学領域で開発されたBPAやベンチマーキングに加え,主に経営工学領域において研究が進められているTotal Quality Management(TQM:総合的品質管理)の考え方を参考に,プログラムの「プロセス」(介入の質)の評価,即ち,プロセス評価の方法論の検討を行った。アウトカム評価は,一般にアウトカム志向が強く,評価方法論が整備されているものの,前述した技術面等の問題により実施が困難であることから,それを技術的に補完するためのプロセス評価の方法論の検討である。
またフィールドにおけるBPAの現状を把握するために,研究協力者とともに,キャリア支援プログラム(例:高齢者のライフキャリア支援)におけるベストプラクティスのレビューを行った。その結果,多くのプログラムの実施過程および効果の検討には,いわゆる「評価に耐えうる」体系的な規準・基準(ベンチマーク)が導入されておらず,何をもって成功事例・優れた実践(BP)とするのか,どのように当該BPを他のプログラムに有意義に活用するか,という点を検討するためのプログラム・プロセスの可視化が体系的には行われていないことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベストプラクティス・アプローチ(BPA)によるプログラム評価の検討を行うためには,いかに効果的にプログラム・プロセスの可視化を行うかが鍵となる。本年度は,主にキャリア支援を想定したベンチマーキング(ベンチマーク指標の開発)についての研究を行い,どのような方法論が適しているかの考察を行った。またアウトカム評価も含め,総合的なプログラム評価モデルのレビューを行い,BPAがこれまでのプログラム評価研究のどの枠組みに含まれるのか,あるいは新たな枠組みが必要なのかについての検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては,エビデンスベースド・アプローチ(EBA)を補完するベストプラクティス・アプローチ(BPA)を開発するために,主に対人サービスにおけるTQM(統合的品質管理)の方法論などを参考にしつつも,標準化(standardization)と個人化(individualization)の関係性に着目し,どのような評価アプローチが可能かについての検討を行う。また心理教育・キャリア支援におけるBPの検討も継続して行い,BPAが既存のプログラム評価モデルのどこに位置づけられるのかについての検討も行う。
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