本研究の目的は,エビデンスベースド・アプローチ(EBA)を補完する方法論としてのベストプラクティス・アプローチ(BPA)のあり方を検討することであった。最終年度では,BPAを展開するにあたって既存のプログラム評価の理論・方法論をどのように活用できるかを継続して模索した。 昨年度のサクセスケース・メソッド(SCM)に続き,今年度は評価研究の専門的知見・判断を評価基準としたデルファイ・メソッド(DM:delphi method)の応用可能性を検討した。従来のプログラム評価では,介入の過程と効果がそれぞれプロセス評価とアウトカム評価という枠組みで評価されるが,本研究課題でこれまで検討してきた通り,EBAでは技術的・倫理的に困難なケースにはこの枠組みが適用できないことも多かった。そこで専門知見の収斂を目的としたDMを基盤とした評価実践の可能性が示された。なかでも専門的知見のなかに有機的に包含される規準・基準に基づき複数名・複数回の反復(iteration)型データ収集を行うDMは,価値判断・価値づけの方法が重視される評価研究の方法論に適している。 DMにおける具体的なプログラム分析として,本研究課題の研究協力者と共に,就職氷河期世代支援プログラムの一環として設置された就職氷河期支援窓口への応用をプログラム評価の評価可能性アセスメントの枠組みのなかで検証し,データ収集や評価結果の活用(use)のあり方を検討した。
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