研究実績の概要 |
少子高齢化に始まり、ひきこもり100万人時代、8050問題をも抱える本邦において、「精神的に脆い」と言われる若者たちが、「予測出来ない厳しい世の中」を生き延びていけるように教育しておく必要性に駆られている。義務教育では手つかずの、resilienceの向上を意図した教育、つまり、学生自らが自身の健康度合い(well-being)を高めていけるような機会を設けるべく、高等教育機関における初年次教育にPositive Education(以下、Pos iEd)のエッセンスを取り入れ、その効果を縦断的にも検証し始めている。 2016年度入学生を対象にPosi Edを提供したpre-post検証では、PERMA-KITの下位尺度のうち、Positive Emotion、(t =2.43, df=34, p<.05)、Relationship、(t =3.02, df=34, p<.01)、Meaning、(t =3.08, df=34, p<.01)、Overall、(t =2.96, df=34, p<.01)、KIT(大学適応に関する3項目): (t =2.61, df=34, p<.05)の5領域において有意差がみられ、入学後1年間で肯定的な気持ちや人間関係(Posi Edで強調する「Relationship」)の充実、日常生活のなかで何がしか「意味」=Posi Edで強調するところのMeaningを見出していく度合いが高まることが示唆された。 一方、何かに従事し熱意をもって取り組んでいけるような「Engagement」や、結果として何がしか達成感が得られるような「Achievement」の値が有意に上昇するには1年間では足りず、更に時間が必要かと考えられる。 次に、2017年度入学生の3クラス(1クラスのみ実験群)を対象とした比較検証をしたところ、前年度とは様相が異なる結果が得られた。2017年度入学生は、学科問わず3クラス共に「心身の健康度合い」が有意に低下し、多忙にならざるをえない一年次の生活の中で、学生が徐々に疲弊していく様子が伺えた。学生生活のなかで時と共に諸々「慣れ」が生じることで、2年次以降、彼らの「心身の健康度合い」が好転していくのかどうか分析が必要である。
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