研究課題/領域番号 |
18K03121
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
舛田 亮太 椙山女学園大学, 人間関係学部, 准教授 (30547055)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自傷 / 解離 / 心理教育 / トラウマ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1.解離性自傷を説明するための心理教育テキスト作り、2.作成したテキストを中学高校大学で実施すること、3.心理教育実践の効果検証、であった。3年目である2020年度は、2019年度に作成した大学生用、高校生用テキストを用いて、許可を得た実施校に教室において心理教育を実施する予定であった。しかしながら、2020年3月以降は実施許可を頂いていた高校が全て中止となった。大学でも多くの授業がオンライン化されたため、直接的に教室で実施することも困難となった。そのため、①文献収集とこれまでの収集したデータの分析、②web上での研究発表を行った。①に関しては、大学生版として試作したテキスト(舛田・上地,2019)に更なる修正を行った上で心理教育を行い、女子大学生75名に自由記述を求めた。研究協力利用の同意が書面で得られた72名の自由記述結果をKJ法で分析した結果、自己理解、他者理解、人的資源の3つの有用性にカテゴリー化された。心理教育テキストについては、文言の親和性と対象者のバランスに関する指摘も得られた。さらに、2019年度に作成した高校生テキストについても作成過程について詳細に振り返った。侵襲性の観点から過度にピアサポートを重視しなかった点など、高校生版テキストの重要点についてまとめた。そして、高校生版、大学生版ともに、それぞれの発達段階に応じたわかりやすい架空事例をいれる必要性があることが今後の課題とされた。②に関しては、心理臨床学会、国際児童青年精神医学会のweb大会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルスのため、直接教室に訪問する調査活動は全て行えなかった。オンライン上でのデータ収集については、本研究内容が非常に繊細な内容であることから慎重に検討する必要があると考え、データ収集は行わなかった。学会発表に関しても、事例検討など、対面で行う必要性の高い学会の多くは中止となった。従って、Web大会の参加や発表は可能であったが、他の実践者や研究者との研究内容に関する議論は十分に行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年5月時点でも緊急事態宣言が発令されている自治体も多く、状況は安定していない。コロナ禍がおさまらない状況下で、高校生、大学生に自傷や解離の内容を説明し、データ収集を行うことには、心理的な侵襲性の観点からより十分な配慮が必要と思われる。従って、2021年度もコロナウィルスの感染状況を十分に踏まえ、対面授業でのデータ収集を原則としながらも、その実施に関しては慎重な判断を行う。また、自傷や解離、トラウマを教育機関で学ぶ際の心理的安全感の確保に関しても再考する必要があると考えている。従って、これまでの取り組みについても再度振り返り、心理教育に関する心理的安全感を考えるための視点について、より広い視座からまとめる。 以上から、原則としてこれまで収集したデータをさらに細かく分析することで最終年度の報告を行う予定である。さらに、既にいくつかの学会ではweb開催が決定されているため、それらの機会を積極的に利用し、情報収集・発信を行っていくつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスにより訪問調査活動は全て行えなかったため。また予定されていた学会も中止かweb大会へ切り替えられたため。2021年度も学校を訪問する形態での調査活動や対面式での学会参加は困難な状況にある。従って、前年度使用額については、文献収集費用、再分析に必要な分析ソフトの購入費用、web大会の参加・発表費用などにあてる。
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