本研究の目的は、1.解離性自傷を説明するための心理教育テキスト作り、2.作成したテキストを高校大学で実施すること、3.心理教育実践の効果検証であった。最終年度である2023年度は、2022年度にcovid-19の感染対策に配慮しながら行うことができた新たなデータの整理・分析を行った。高校生版テキストを用いて、一般市民を対象に心理教育を行った自由記述データを分析した。受講者7名のうち、研究協力利用の同意が書面で得られた7名全員を分析対象とした。結果、分類コードの視点は、1.現状況の共有(「受講者自身の状況を他者と共有したい」など)、2.類似者との共有(「似た状況にある人の具体的意見を知りたい」など)に大別された。2022年度に発表した教育関係者データの特徴(「わかりやすさ」「支援の具体性」など)と比較すると、状況の共有に重きが置かれる傾向が示唆された。これまで収集した女子高校生、女子大学生、教育関係者、一般市民の分析結果を総括すると、テキストの内容は同じであったとしても、受講者側の立場、状況、視点によって生成される意味づけが大きく異なることが示された。研究期間全体を踏まえた課題としては、(1)テキスト内容の具体性と抽象性のバランス調整(例:テキスト本体は同一ものとして、各対象ごとの別冊ワークを作成するなど)、(2)各対象人数の偏り調整と半構造化面接によるナラティブデータ収集の必要性、(3)心理教育の実施形態(対面もしくは遠隔、個人もしくは集団)を判断できる心理的安全感の基準作成、の3点に集約された。最終年度は、対面形式の学会・研究会が増加し、テキスト内容や心理教育の実施について各専門家から直接的に意見や助言を頂くことが可能になってきた。これらも参考にして、今後は論文にまとめていきたい。
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