研究課題/領域番号 |
18K03123
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
守谷 順 関西大学, 社会学部, 准教授 (70707562)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 社交不安 / イメージ / 解釈バイアス |
研究実績の概要 |
2019年度は,ユトレヒト大学のExperimental Psychopathology LabのElske Salemink准教授のもと,社交不安のイメージ能力,イメージ変容による認知の変化について研究を行った。特にSalemink准教授が得意とする「解釈バイアス」に着目し,社交不安の認知変容の実験を試みた。 社交不安者は社交場面(人と接したり,人前で話したりする場面)をイメージしたとき,その状況をネガティブにとらえることが知られており,解釈バイアスと呼ばれる。解釈バイアスが不安を強める一因となっており,そのメカニズムの解明が必要とされている。ネガティブに解釈する要因として,社交不安者は社交場面をイメージした際,恐れている自分自身に注意を向けており,そのためネガティブに感じると考えられている。そこで,イメージしている最中の注意の向け方を変えるトレーニングを実施し,不安が低減するか,解釈バイアスが弱まるか検討した。まず,解釈バイアスを測定する課題の信頼性・妥当性を確認するため,大学生を対象に実験を実施。そのうえで,イメージ中の注意の向け方を変えるイメージトレーニング課題を実施した。イメージトレーニングには,オックスフォード大学Emily Holmes教授よりその方法を教えてもらった。結果,社交不安の傾向が高いものはイメージをコントロールすることが難しく,既存のトレーニング法では容易には解釈バイアスが変容しないことが分かった。 投稿論文に関しては,社交不安の注意研究をまとめたレビュー論文と,不安とマインドフルネスに関する調査研究の論文が受理された。他に,現在1本の論文が査読中であり,また上記のSalemink准教授との共同研究2本を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,社交不安の解釈バイアスに詳しいSalemink准教授との共同研究が本格始動し,密にミーティングをしながら社交不安のイメージ研究にとりかかることができた。そのため,前年度の遅れを取り戻すことができ,おおむね順調に進展している。論文執筆も安定してできている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度はSlaemink准教授との共同研究を論文化し,投稿することが大きな目標である。同時に,残された課題,社交不安のイメージ能力とワーキングメモリ,視覚的注意との関連について明らかにする研究にも取り掛かり,年度内にデータを取得する予定である。ただし,現在「密」を避けるために実験室での実験が困難であるため,オンライン上でできる実験課題にシフトすることを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ユトレヒト大学において十分に実験は実施したものの,実験参加者への謝礼の扱いが予定と異なっていたため(謝金ではなく授業ポイント),謝金での支出があまりなかった。また,ユトレヒト大学では心理実験の設備が十分に備わっていたため,物品の支出がおさえられた。さらに,様々な学会に参加したものの,開催地がヨーロッパであったためオランダから近く,旅費があまりかからなかった。 今後は,オンライン上でできる実験課題へシフトすべく,オンライン実験が可能なソフトウェアの購入,および実験参加者への謝金に使用する予定である。
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