本年度は,重要な意思決定に影響を及ぼす「人生の価値志向性」の尺度開発を行った。昨年度選定した44項目を用いて,再度,予備調査を実施し,本調査で使用する37項目を決定した。本調査の対象者は,若年(20-30代)605名,中年(40-50代)611名,老年(60-70代)400名の3世代計1616名であり,ウェブによるアンケート調査を実施した。全体データで,探索的因子分析を行った結果採用された26項目のうち,各年代で探索的因子分析を行った時に,因子が移動した4項目を削除し,22項目の尺度となった。検証的因子分析の結果からも,これらの因子構造が妥当であることが確認され,最終的に自己観と幸福志向の2軸を想定した4因子(相互独立・相互協調×快楽・目的)の尺度が作成された。 この完成した尺度を用いて,日本と文化的に対極と位置付けられるアメリカにおいて,同様の調査を,非ヒスパニック系白人(若年785名,中年802名,老年861名)とアジア系のアメリカ人(若年443名,中年321名,老年267名)に限定して実施した。比較検討することで,日本人の「人生の価値志向性」の特徴を示すことができた。 また,これらの「人生の価値志向性」が,実際の重要な意思決定にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにするために,がん患者を対象としたインタビューを実施予定である。これらの結果から,がん患者の重要な意思決定において,日本人らしい「人生の価値志向性」を大切にした支援を提案する。
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