本研究では、周産期の不安症に対する治療とケアの向上を目的として、①妊産婦の不安症に対して産前から産後まで途切れのない支援を実現するための認知行動療法(cognitive behavioral therapy; CBT)を開発し、②前後比較デザインによって、開発したCBTの実施可能性と予備的な有効性を検証する。 ①CBTの開発では、認知行動療法の専門家チームで周産期のうつ・不安、ストレスに関する文献を精査した。そこで我々は、周産期メンタルヘルスケアに従事する専門家(助産師、産科医等)と協働して、臨床現場に即した、認知行動療法に基づく妊産婦に特化したコミュニケーションプログラムを開発した。開発したプログラムは全1回30分間で、他者に援助を求めるスキルの心理教育と練習、産前・産後の生活場面での活用例(例:つわりで家事ができない場面でパートナーに援助を求める)という内容から構成されている。本プログラムは全妊婦を対象とし、グループ形式(2~3名)で実施する形式である。 ②CBTプログラムの効果検証では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響から、新規の介入研究を開始する実施体制が整わず、計画通りに推進することが困難であった。そこで2021年度下半期に、引き続き懸念される新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を鑑みて、①で開発した妊産婦のための認知行動療法に基づくコミュニケーションプログラムの内容をリーフレットとして制作して、これを妊婦とその家族へ配布するアウトリーチ活動へ切り替えて行った。この他に、妊産婦の不安を評価するために、不安症状尺度の日本語版について、原著者から作成開発の許諾を得て、尺度翻訳を完了し、本尺度の信頼性・妥当性について、日本の周産期女性で検証するための調査を約600名の妊婦に実施した。
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