研究課題
近年,成人期の双極性障害患者の初発年齢が10代の時期である症例も多くみられることが報告されており(e.g., Perlis et al., 2004),子どもの双極性障害も注目されるようになってきた。しかしながら,子どもの双極性障害は注意欠如・多動性障害(ADHD)との鑑別の困難さや,併存頻度の高さも指摘されている。そのため,特に子どもの双極性障害の影響要因を考える際には,ADHDの併存の可能性を視野に入れて検討することが重要である。平成30年度の調査では,児童期・思春期(9-16歳)を対象とした調査研究に加えて,双極性障害,ADHD,抑うつエピソードの診断を受けている子ども(10-18歳)と養育者を対象とした質問紙調査の実施も開始した。得られた調査データから,環境要因の一つとして母親の抑うつに着目し,子どもの自己制御特性と双極性障害傾向との関連について母親の学歴や世帯年収を統制したうえで,ADHD傾向の有無による比較検討をおこなった。その結果,ADHD傾向の評価基準を超えている群では,子どもの自己制御特性の影響は認められず,母親の抑うつの高さが子どもの双極性障害傾向に影響を及ぼすことが示された。一方,ADHD傾向の評価基準を超えていない群では,母親の抑うつが子どもの自己制御特性の下位次元である「興味・関心の一貫性」を低め,そして興味・関心の一貫性の低さが双極性障害傾向を高めるという結果が得られた。この結果は,ADHD傾向の併存の有無によって,双極性障害傾向に関与している要因の影響の仕方が異なることや,子どもの双極性障害傾向の低減につながる有効な働きかけも異なる可能性を示唆している。
2: おおむね順調に進展している
本年度の調査研究は計画通りに進んでいるため,おおむね順調に進展していると判断した。これまでに取得したデータについては,出来る限り早く分析結果をまとめて研究成果として発表できるように進めていく。
現状において,研究計画の修正や変更などの予定はなく,研究を遂行する上での問題点もない。次年度も引き続き,臨床群の調査参加者の協力を得ながら,さらなる横断データの蓄積と縦断調査の実施に向けて努めていく。
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Obesity
巻: - ページ: -
10.1002/oby.22451
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