研究課題
双極性障害の好発年齢期は20代半ばとされているものの(Anderson et al., 2012),子ども期の双極性障害の発症も少なくなく,成人期の発症に比べより深刻な疾患と関連をもつことが報告されている(Blader et al., 2007)。しかしながら,子どもの双極性障害は注意欠如・多動症(ADHD)との鑑別の困難さや,併存頻度の高さも指摘されている。そのため,子どもの双極性障害の影響要因を考える際には,ADHDの併存の可能性を視野に入れて検討することが重要である。本研究課題では,児童期・思春期(9-16歳)を対象とした調査研究に加えて,双極性障害,ADHD,抑うつエピソードの診断を受けている子ども(10-18歳)と養育者を対象とした質問紙調査を実施した。これらの調査研究の主な結果として,子どものADHD傾向の有無によって,双極性障害傾向に対する自己制御の影響の仕方が異なることが示された。とりわけ,ADHD傾向がみられない子どもでは,自己制御の下位次元の一つである「興味・関心の一貫性」が母親の抑うつと子どもの双極性障害傾向との関連を部分的に媒介することが明らかとなった。また,ADHD傾向がみられない子どもにおいてのみ,興味・関心の一貫性は,双極性障害傾向と関連の深い問題行動の一つである自傷行為傾向との間にも負の相関を持つことが認められた。このことは,子どもの双極性障害傾向やそれに関わる問題行動の低減のためには,子どもの不注意や多動行動の徴候の多少を考慮したうえで,母親の抑うつへの対応と同時に,子どもの興味の一貫性を促すような働きかけが部分的に有効かもしれない可能性を示唆するものである。最終年度である令和2年度において,本研究計画全体を通しての縦断データの分析を完了したため,出来る限り早く結果をまとめて研究成果として発表できように努めている。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
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