研究実績の概要 |
ロールシャッハ法における平凡反応(P)の出現頻度をカードごとに検討した結果,統合失調症26名,自閉アスペルガー症19名,パーソナリティ障害27名(ほとんどがPBD)の鑑別にはカード6におけるPの出現頻度が鑑別指標として有力であることが示された。すなわち,カード6のPに関しては,統合失調症や自閉アスペルガー症よりもパーソナリティ障害の者が有意に多くのPを産出し,全カードにわたるPの総数は自閉アスペルガー症の方が統合失調症よりも有意に多いことが示された。この成果は,2021年度の国際学会(ICP2020+,on-line)にて報告された。 また,同データのうちP = 0の患者データを除いた者ならびにあらたにP >= 1の者を対象として,Pに使用される決定因について検討を行ったところ,P反応に対する無彩色(黒)の使用が鑑別診断において重要な役割を果たしていることが示唆された。すなわち,有意傾向(p = .068)ながらも自閉アスペルガー症の方が統合失調症よりもP反応生成に黒を用いないことが認められた。この知見は,第25回日本ロールシャッハ法学会において発表された。 さらに,関連する領域として,ボーダラインパーソナリティ障害のロールシャッハ法上の言表現の特徴を実行機能との関連から検討すること,認知症における妄想の特徴をロールシャッハ法上の特徴とともに検討することなどについて,それぞれ所属機関誌(岐阜大学カリキュラム開発研究,38巻)において報告した。
|