研究課題/領域番号 |
18K03140
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
山崎 勝之 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 特命教授 (50191250)
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研究分担者 |
内田 香奈子 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (70580835)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自律的セルフ・エスティーム / 他律的セルフ・エスティーム / タブレットPC版潜在連合テスト / 児童 / 学校予防教育プログラム |
研究実績の概要 |
当初の計画では、本年度は、昨年度に完成した自律的セルフ・エスティーム(SE)プログラムの効果評価の研究を本格的に実施する予定であった。その実施は、小学校高学年において教育実施群と対照群を学級単位でそれぞれ複数設定し、両群を教育前後で比較した上での効果評価を行うものであった。また、教育終了後数週間でのフォローアップ評価も実施する予定であった。そしてその後、この概念、教育方法、効果評価を総合的に紹介する資料を作成し、広域の学校における教育の円滑な適用のサポートプランを考案することを計画していた。 しかし、コロナウィルス感染蔓延の影響で、当初計画していた小学校での予防教育の実施ができなくなった。特に、この予防教育プログラムは長期に渡る実施を予定していただけに、学校での計画どおりの実施は不可能となった。また最終の効果評価研究ができなかったことから自動的に実現が不可能となったが、その後の学校教育への展開も対面での実施要素の多いものが予定されていた。 このような状況から、研究期間の延長を申請し、承認されるに至り、研究は次年度に延長されることになった。そのため、本年度は、次年度での予防教育プログラムの円滑な実施をはかるため、使用する教材や効果評価の材料をすべて揃える作業を行った。これらは、パワーポイントスライド、動画、種々の紙教材等に及んだ。そしてさらには、効果評価の分析のための統計解析方法について統計解析ソフトRを中心にプログラムを作成し、すぐに適用できるように解析方法を整えた。準備したRスクリプト群は、階層的重回帰分析、多母集団同時分析、成長曲線モデル、マルチレベル分析、平均共分散構造分析、多要因に及ぶ分散分析などであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記の研究実績に記載の通り、コロナウィルス感染蔓延により、本年度予定していた主要な研究は実施することができなかった。それらは、開発した予防教育プログラムの学校での実施、比較群とフォロアップ時期を設定した上での効果評価、そして、それに続く学校での普及方途(SEの概念とその教育理論、プログラム内容と実施方法、効果評価方法などの説明内容とその適用方法)の整備と進展を実施することができなかった。つまり、主要な研究目的は実施することができなかった。 加えて、研究を実施できた後はその研究成果を海外の学会に発表する予定であったが、予定していた海外での学会が同ウィルス感染蔓延のため中止になり、このことも実現できなかった。 こうして、研究が遅延し、そのため研究期間の延長の承認を得ることとなり、今年度の主要な実施計画は次年度で行われることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の延長に伴い、次年度の最終年度においては、本年度の研究の推進方策がほぼそのまま適用されることになる。つまり、昨年度に完成した自律的SEプログラムの効果評価の研究を本格的に実施する。小学校高学年において教育実施群と比較対照群を学級単位でそれぞれ複数設定し、両群を教育前後で比較した上での効果評価を行う。また、教育終了後数週間でのフォローアップ評価も実施する予定である。 効果評価のための測定は、昨年度に完成済みのタブレットPC版潜在連合テストを使用して自律的ならびに他律的SEの変化を非意識のままに同一測定法でとらえる。自律的SEと他律的SEを同時に同じ潜在連合テストを適用して教育効果を検討する研究はこれが世界で初めてとなる。教育群と対照群は複数学級からなり、できるだけ等質になるように設定する。その上で、両群とも同じタイミング(教育群で言えば、教育前後とフォローアップ評価時)で評価を実施する。 この効果評価の研究後には、4年間の研究成果を学校に広める方途を考えたい。学校においてはSEは自己肯定感など同様の概念で最も重視されている心的特性の一つであるが、その理解と扱いは十分ではなく、問題のある他律的SEを育成している場合も少なくない。つまり、異種類のSEを適切に弁別し、適応的なSEを選択的に育成することがなされていない。本研究は、そのSEの概念への考え方に修正を迫るが、批判に終始するのではなく、実際にその教育方法と測定方法を提供できることになる。そこで、この概念、教育方法、効果評価を総合的に紹介する資料を作成し、それをもとに講演や研修を展開し、同時に測定方法や教育方法を実習を交えて伝える。そして教材の作成や実施方法を依頼に応じて直接的に指導することを含めて、広域の学校における教育の円滑な適用のサポートプランを考案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
<理由> コロナウィルス感染の蔓延による研究期間の延長により、本年度の研究計画で中止を余儀なくされた多くの部分は次年度ですべて実施する必要がある。そのため、研究経費の大半は次年度の使用に回すことになった。 <使用計画> 研究期間の延長により、本年度の使用計画はほぼそのまま継続することになる。予防教育プログラムの実施と効果評価、そしてその普及方途に必要な物品を購入し、またその作業に必要な人件費・謝金等に使用する。さらに、その研究成果は国内外の学会において発表予定である。その発表の多くは、オンライン開催によるものと予想している。また、教育プログラムの普及についてはオンライン講演や研修を予定している。
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