研究課題/領域番号 |
18K03141
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
金子 周平 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (10529431)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グループ / ファシリテーター / 訓練 / 効果検証 |
研究実績の概要 |
治療や成長を目的としたグループ(各種の集団精神療法、Encounter Groupなど)のファシリテーターが備えるべき資質や技能を明らかにし、それを育成することが本研究の大きな目的である。そのための下位目標としてファシリテーターの[訓練プログラムの開発]とその[効果検証]を目指すものである。ファシリテーター訓練ないし資格に関する様々な立場を概観した上で、1)各種のファシリテーターに共通する資質や技能の測定尺度の開発と修正、2)グループ・アプローチ臨床歴による横断的研究、3)暫定的訓練プログラムの効果検証、4)改訂版訓練プログラムの効果検証(非無作為化比較研究)を行う。 本研究は、実施を終えたパイロットスタディ(金子・白井,2017;木場ら,2017)をベースに計画されるものである。雛形となる測定尺度を元に、1)基礎研究として[効果検証]を目的とする尺度の開発を行い、2)その妥当性の確認のために横断的研究を行っている。グループ臨床歴によって得点が上昇することによる妥当性の保証を狙いとしている。また、パイロットスタディにおける訓練プログラムの雛形を元に、3)暫定的訓練プログラムを行い、上記尺度を用いた効果検証(比較群なし)を行った。本研究は[訓練プログラムの開発]も目的としている。この研究を通して、プログラム実施上の問題等の改善、訓練構造(人数、セッション数、オリエンテーション内容)などを改善した上で、現在、4)改訂版プログラムの作成とその効果検証へと進んでいる。この研究では訓練の対象と同質の比較群を設定し、非無作為化比較研究を行う予定であるが、比較群を対象とした研究段階にはまだ進んでいない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パイロットスタディ(金子・白井,2017;木場ら,2017)を元に作成された測定尺度は、その妥当性や信頼性の検証のために、因子分析を実施し、PCA-3EGやリーダーシップ尺度を用いた相関分析を行なった。またさらなる妥当性の検証を目的として、横断的研究を行う。グループ臨床歴によって得点が上昇することによる妥当性の保証を狙いとし、その結果は一定程度示されている。ここまでの研究プロセスは平成31年4月までに終える予定であったため、十分に進行計画は達成できている。この測定尺度作成までの研究は現在投稿準備中である。 また、訓練プログラムを行い、その効果検証(比較群なし)を行うことは平成31年5月から平成32年(令和2年)2月までで計画されていたが、すでにその一部を行うことができている。計画では測定尺度の妥当性の検討のために、比較群なしの効果検証を行っていたが、比較群のデータを得ることが可能であったため、群間の分析を加えた効果検証を行った。一方はファシリテーター訓練プログラムの実施群であり、もう一方はプログラムを全く実施しない比較群であるため、対象者の質を均一にすることができていない点で十分な分析とは言えないが、当初の目的の尺度の妥当性の確認には十分であった。その研究の報告は、すでに次の学会発表によって行っている。[金子周平・田中将司・堂園安奈・平井もも・森 陽平(2018)ベーシック・エンカウンター・グループのファシリテーター訓練の効果:非無作為化試験 日本人間性心理学会第37回大会プログラム・発表論文集(人間環境大学,2018.9.14-16,150.]
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、ファシリテーター訓練プログラムの実施群と、比較群の質を均一化し、より実践的に有用な比較研究に進んでいくことを目的としている。当初の目的では、平成32年(令和2年)5月から平成33年(令和3年)2月をそのプログラム実施期間としていたが、研究のプロセスが前倒しになっているため、半年ほど研究を早め、令和元年中には比較研究を行なっていく。訓練群の対象は、臨床心理学を学ぶ大学院生、その修了生、グループ経験をしたことのある学部生であり、ここまで開発してきたグループ・ファシリテーター訓練を実施する。比較群も、訓練群と均一な対象を選択するために、訓練を希望する者に限定する。比較群は構造度の低いグループ体験そのものを行う。分析方法は、分散分析、効果量算出である。 さらに研究を進めるために、当初は量的な効果検証のみで終える予定であった本研究を、質的にも評価することを計画する。具体的には、体験過程スケールを元にして作成された坂中(1998)のEGIMSにより、自己開示、リスニング、フィードバックの3点において、グループ体験中ないし訓練実施中のメンバーの語りの質が変化するか否かを検討する計画である。継時的に評定された語りの質が変化するか否か、群間差がみられるか否かを評定する。そのために訓練群と比較群の両方においてグループ中のビデオ撮影を行い、4名程度の評定者によって、グループのプロセスの一部を逐語化したのち、評定する手続きを用いる。 これらの研究を効率的・効果的に進めていくために、これらのデータ入力と基礎的な分析のためのアルバイトを雇用する予定である。また評定者として研究協力者を募る。 今後の研究の発表の計画としては、本研究の初めの段階で作成した効果測定尺度の論文化が第一優先である。次いで、すでに学会発表を終えた研究の論文化、最後に質の均一な比較群を用いた効果検証の学会発表と論文化を行う。
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