研究実績の概要 |
本研究は、Aveline(1993)やChen et al.(2018)が指摘してきたファシリテーター(Fac.)の態度や在り方を表す項目に加え、構造化グループ(SG.)と非構造化グループ(USG.)それぞれのFac.の技能面を追加し、包括的なFac.機能自己評価尺度(SAFFS)を作成することを目的とした。本尺度得点と心理療法的態度やリーダーシップ特性の得点、グループ経験年数との相関分析によって基準関連妥当性を確認した。さらにSG.、USG.の2種類のグループのFac.訓練における効果研究を通して予測的妥当性を検討した。 グループを実践する専門家もしくは訓練・学習中の者の内データ欠損のなかった72名(男性31名、女性41名)に関して因子分析を行った。その結果、3因子が抽出され、「構造化と進行の効力感」(F1, α=.90)、「グループへの信頼と尊重の感覚」(F2, α=.80)、「気づきを活かす柔軟な姿勢」(F3, α=.85)と命名された。F1とF2はその弱い相関から独立性の高い因子として捉えられた。その他の特徴として、F2はFac.の「無条件性」の自己評価との高い相関、F3はグループ経験年数との高い相関が確認された。 SG.では13名,USG.では8名の訓練希望者を対象とした訓練を行い、本尺度を用いた効果検証を行った。SG.とUSG.のFac.訓練の両方でF1およびF2の機能の自己評価の向上がみられたが、F3には弱い効果しかみられなかった。F3はFac.の生涯発達する機能であるため、短期間の訓練では効果的ではなかった可能性がある。以上の結果から、SAFFSに関して一定の信頼性と妥当性を示すことができたと考えられる。SAFFSはFac.訓練やグループ体験等の効果の推定の他、Fac.が自身のファシリテーションの偏りに気づくために項目内容の確認や得点を用いることも可能である。
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