研究課題/領域番号 |
18K03145
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
冨高 辰一郎 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (00237124)
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研究分担者 |
川崎 洋平 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (90711573)
古川 壽亮 京都大学, 医学研究科, 教授 (90275123)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | うつ病 / 指数分布 / 順序尺度 / 抑うつ / 項目反応 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
うつ病は現在社会では深刻な社会問題となっている。そして現在のうつ病診断は、抑うつ症状の重症度を評価することによって行われる。では一般人口において、抑うつ症状の重症度はどのような数理学的な分布を呈するのだろうか?意外なことに先行研究はほとんどなかった。我々は大規模なサンプルサイズのデータを用いれば、一般人口における抑うつ評価尺度の項目反応や総スコアの分布に何らかの特徴的な数理パターンが見出せるのではないかと仮説を立て、研究を開始した。 一般人口3万人を対象とした保健福祉動向調査(2000 年)のCES-D抑うつ評価尺度データを解析した。その結果、我々は抑うつ症状の項目反応には共通するパターンが存在することが明らかになった。さらに任意の抑うつ症状の項目スコアの和の分布が、最少スコア部分を除いて指数パターンに従い、また指数パターンにおけるパラメーターの値は選択した項目数によって決まることを見出した。 当該年度においては、日本だけでなく、欧米の大規模疫学調査のデータを使って本現象の再現性が確認した(Tomitaka et al 2018:PloS )。またK6,PHQ-9といった他の抑うつ評価尺度でも、本現象を確認できた(Tomitaka et al 2019: Heliyon)。さらに抑うつ症状の分布が年齢に対して安定しているのは、指数分布が関係していることを報告した(Tomitaka et al. 2018:Frontiers in psychiatry)。今後はなぜこういった指数分布に従った現象が起きるのか、そのメカニズムを明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したように、様々な評価尺度を用いた抑うつ症状の項目反応や総スコアの分布について解析を行い、成果を得た。その内容を海外の学術誌に投稿したところ、3本が掲載された。また国内の研究会でも一度発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでCES-D,PHQ-9やK6といった評価尺度を用いた日欧米の公的データを分析することによって本現象の再現性を確認したが、他のGHQ,SDS(Self-rating Depression Scale),ベック抑うつ評価尺度、あるいはGAD-7のような不安評価尺度でも検証する。また一般人口以外の集団でも調査を行い、更に分布に影響を与える因子(年齢、性、他の属性)を抽出する。 更にこのような現象が起きるメカニズムを明らかにする。そのためには、以下の方法論 を用いる予定である。 (1) 抑うつ評価尺度の数理学的な考察によってモデル(仮説)を作成する。 (2) 上記モデルを検証するためのシミュレーション研究や数理的証明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画よりも研究が進展したため、本年度だけで既に3つ論文を掲載することができ、さらに現在一つの論文が掲載予定である。予想していた以上の論文の掲載費用が必要となったため、前倒し支払い請求を行ったが、出版社からの論文掲載費用の請求が2019年度にずれてしまったため、次年度使用額が生じてしまった。 生じた次年度使用額は、来年度に先送りとなった論文掲載のための費用にあてるつもりである。基本的には本年度以降の研究計画に大きな変更はなく、得られた成果を取りまとめ、成果の発表を進めて行く。
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