社交不安症(Social Anxiety Disorder;SAD)とは、対人場面において“恥ずかしい思いをするかもしれないという顕著で持続的な恐怖”を特徴とする。その有効な治療手段として、エクスポージャーやリラクセーションを含む認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy;以下CBT)がある。しかしCBTが実施可能な施設や治療者は限られている。また欧米ではコンピューターを用いたCBT(Computer assisted CBT;以下CCBT)が活用されているが、日本では試験的な段階であり実用レベルのCCBTは存在しない。ただ欧米でのCCBTもプログラム内容と治療効果との因果関係は不明瞭である。またCCBTの治療効果の検証は心理面での評価が中心であり、行動指標ならびに生理指標を同時計測した研究は少ない。 本研究は、CBTの実施施設がない遠隔地でも実施可能で,SADに焦点を絞ったCBT用の治療プログラムを開発し、心理面だけでなく、行動指標ならびに生理指標を取り入れ、その効果を検証することを目的としている。 これまでの研究では、対処方略が異なることが報告されている。私たちはこの報告をもとに、アクティブな対処を有するスピーチタスク中の自律神経系の働きを検討してきた。 健康な大学生を対象として、社交不安傾向を高い者と低い者に対して、スピーチ課題における他者の評価が自律神経系へどのような影響をもたらすのかを検討した(投稿準備中)。その結果、スピーチ課題において他者から評価がなされた場面では、社交不安傾向の高い人も低い人も交感神経系、副交感神経系の指標に有意な差は認められなかった。しかし、その後、実際には参加者のスピーチに対しての評価はなされていないかったと伝えた後のスピーチ課題において、社交不安傾向の高い人では副交感神経系の活動が有意に抑制されていた。
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