研究実績の概要 |
心不全に伴う不眠そのものに焦点をあてられることは多くないが、心不全患者の約半数に睡眠の問題があり、心不全の悪化や死亡と関連することが指摘されてきた(Kanno,2016)。しかし、心不全患者における不眠に対する介入効果の報告は限られており、不眠へのケアについて患者がどのようなニーズを持っているかも十分に知られていない。 本研究では、心不全患者における睡眠の問題を明らかにし、心不全患者の睡眠に対する懸念と支援ニーズを整理することを目的としている。 本年度は、2020年度に実施した、心不全で通院中の20歳以上の者を対象としたインターネット調査の解析を行った。調査は倫理委員会の承認を得ておこなった。 571名(男性359名、女性212名)のHF患者から回答を得、平均年齢は51.84±15.91歳(20-90歳)であった。アテネ不眠尺度によるカットオフを超える不眠症状は51.8%に認められ、そのうちの24.1%が何らかの睡眠薬を服用していた。心不全の自覚的重症度NYHA分類はⅠ:373人(65.3%)、Ⅱ:157人(27.5%)、Ⅲ:30人(5.3%)、Ⅳ:11人(1.9%)であった。NYHAⅠ、Ⅱ、ⅢおよびⅣの3群において、不眠症状を示した者はNYHAⅠ:157人(42.1%), Ⅱ:109人(69.4%), Ⅲ・Ⅳ:30人(73.2%)であった。また、K-6による抑うつ症状のカットオフを超えるものはⅠ:136人(36.5%)、Ⅱ:89人(56.7%)、Ⅲ・Ⅳ:35人(85.4%)であった。不眠症状、抑うつ症状ともにHFの自覚的重症度が上がるにつれて増加することが明らかになった
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