研究課題/領域番号 |
18K03160
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
河瀬 雅紀 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 教授 (70224780)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心的外傷後成長 / がん / 糖尿病 / 心理的適応 / 健康行動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、がん患者と糖尿病患者の心的外傷後成長(PTG)に焦点をあて、患者が持つ自己像や世界観についての認知の変化と行動変容との関係を明らかにし、健康行動の促進を目指すものである。 2019年度は、糖尿病罹患後に心的外傷後成長と同様の成長を示した患者について、その成長のプロセスを明らかにするために、大学附属病院通院中で罹患歴2年以上、6か月以上HbA1cが8%未満、日本語版外傷後成長尺度(PTGI-X-J)の総得点が50点以上の2型糖尿病患者を対象にPTGI-X-Jの質問項目に沿った内容を含む半構造化面接による調査を、研究協力者(臨床心理士)が実施した。面接調査では14名まで達し、そのうち7名については、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)による分析を実施した。 次に、長期生存しているがんサバイバーの心的外傷後成長と精神的苦痛の緩和や心理的適応、健康行動との関係を明らかにするために、研究協力者(研究生)とともに質問紙調査を実施した。すなわち、心的外傷後成長が維持される要因としてピアサポート、また心理的適応と健康行動の具体的な表れとして就労に着目し、PTGI-J、ピアサポート尺度、心理的適応尺度、精神的健康調査票、仕事意欲測定尺度、健康行動に関する項目からなる質問紙調査を実施した。その結果、PTGとピアサポートとの間には相関が認められた。そして、PTGのなかでPersonal Strengthが仕事の充実感に、ピアサポートの情緒的サポートは就労意欲に正の影響を与えた。また、PTG、ピアサポートとも、健康行動の食事・栄養への配慮、健康診断、定期的通院、情報・知識の入手と正の関連がみられた。これらの結果は第21回国際サイコオンコロジー学会(カナダ・バンフ)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
糖尿病患者を対象とした調査については、さらに面接調査を実施し、14名のインタビューを終えた。そして、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)による分析も7名を終えており、おおむね順調に進展している。 一方、がん患者を対象とした調査については、量的調査と質的調査を同時に実施する計画をしていたが、ピアサポート尺度および仕事意欲測定尺度を導入したため調査対象者の負担を考慮し、量的調査を先行実施した。しかし、就労していること、ピアサポートを受けていることを条件としたため、調査対象者数の獲得に限界があったため研究の進展にやや遅れが生じた。また、量的調査と質的調査を併せて実施する計画については、質的調査について、回答者への負担から調査内容を再検討することとなり、研究の進展にやや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病患者を対象とした調査については、分析対象者が増え14名になった。現在、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)による分析を進めている。そこで、分析を加速させ、結果を公表できるようにまとめていく。 一方、がん患者を対象とした量的および質的調査を併せて実施する計画については、調査対象者の負担を軽減するため、質的調査ではインタビューを行わず自由記述による質問紙調査とし、また糖尿病患者を対象とした調査結果を参照して質問項目を少なくし、研究倫理審査委員会に申請していく。調査開始時期が遅れるようであれば、量的調査と質的調査を分離し、量的調査を先行させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に予定していたパーソナルコンピューター等の購入および国内学会参加(旅費、その他)の一部を取りやめたため、物品費、旅費、その他の支出額が少なくなり、次年度使用が生じた。 2020年度の補助金の使用計画は、物品費(パーソナルコンピューター、統計ソフト等)、旅費(国内学会参加、国際学会参加および情報収集)、人件費・謝金(データ入力整理等)、その他(学会参加費、論文掲載料等)である。
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