研究課題/領域番号 |
18K03173
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
片平 健太郎 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (60569218)
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研究分担者 |
中尾 敬 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (40432702)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 計算論モデリング / 強化学習 / 統計モデル / 選択行動 |
研究実績の概要 |
近年,行動データの分析において,その背後にある心的過程・計算過程を表現した計算論モデルが用いられるようになっている。計算論モデルには少数のパラメータで行動の特徴を記述し,心的過程を推定できるという利点がある。しかしながら現状では,そのパラメータがどのような行動の特徴を反映しているか理解されないまま使われることが多く,分析結果が反映するものと研究者の主張に解離が生じている可能性がある。一方,行動データ分析には回帰モデル等の統計モデルも用いられており,そのような伝統的分析手法には行動の統計構造が理解しやすいという利点がある。本研究では,計算論モデルと統計モデルの関係を明らかにすることで,計算論モデルが表現する行動の特徴の理解を促し,両手法の長所を活かした統合的な枠組みを提案することを目的とした。 初年度では,代表的な計算論モデルである強化学習モデルに関し,よく用いられている2種類のモデル (一回当たりの価値の更新の程度を決める学習率パラメータが結果に応じて変化するモデル,モデルベース強化学習) に関して回帰モデルとの対応関係を検討し,モデルの誤設定がパラメータの推定に系統的なバイアスを与えることを明らかにした。いずれも実際の行動データの解析や計算機シミュレーションをもとに,既存の研究がその誤設定による影響を受けている可能性があることを示した。この結果は,計算論モデリングの方法論を精緻化するのみならず,精神疾患や行動との関係について議論した過去の研究の解釈についても見直しを迫るものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目的であった代表的な計算論モデルと統計モデルの関係の検討について,二種類のモデルに関して成果をまとめることができたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は対象とするモデルの種類を拡大ながら,実験課題のデザインも精査し,行動データの特徴をとらえるための統合的な枠組みを検討・構築していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
クラウドソーシングを利用ことなどにより予定額より少ない額で実験が実施できたため,余った経費を次年度の実験に使用することとした。
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