研究課題/領域番号 |
18K03176
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
小野田 慶一 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 講師 (60432712)
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研究分担者 |
正木 宏明 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80277798)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | tACS / θ帯域 / 前帯状回 |
研究実績の概要 |
前帯状回は認知及び情動に関わる重要な脳領域で,さまざまな精神・神経疾患で異常が報告されるが,その正確な機能に関しては論争となっている。一方で近年,非侵襲的脳刺激が認知機能の改善や疾患の治療として広く用いられるが,その刺激対象は大脳皮質表面にとどまっており,深部を選択的に刺激することは困難であった。我々は前頭前野におけるθ帯域の経頭蓋交流電気刺激(tACS)が比較的深部にある前帯状回の活動を選択的に調整できることを発見した(Onoda et al., 2017)。この知見にもとづき,本研究ではθ帯域(6Hz)のtACSを用いた前帯状回に対する選択的刺激によって,認知および情動機能を制御できることを,行動・脳波・脳画像研究から重層的に明らかにし,前帯状回の機能を因果的に探る手法を確立することを目的とした。 前帯状回は内的・外的なエラー信号に対して顕著な反応を示す。この特性を利用し空間ストループ課題にてエラー検出過程を捉える。この課題は,固視点の上下いずれかに,上向きあるいは下向きの矢印が提示され,その位置に関係なく,矢印の向きを可能なかぎり素早く答えさせるものである。2019年度では,fMRI実験のデータ取得を完了し,解析を行った。この実験ではtACSの実施前,実施中,及び実施後において空間ストループ課題を負荷した。実施前と実施後は同時にfMRIによる脳活動の測定を行い,tACS実施中は行動のみ測定した。tACSはθ帯域(6Hz)刺激と偽刺激が用いられた。行動レベルではtACSは空間ストループ課題の成績に影響を及ぼさなかった。脳活動をみると,エラーに関連して前帯状回が頑健な活動を示すことが確認され,この活動でもtACSの効果は認められなかった。一方で,前帯状回と島前部の機能的結合に関しては有意に低下しており,自身の先行研究を裏付ける結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳波を用いた実験に関しては,データ取得に遅れが認められる。
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今後の研究の推進方策 |
θ帯域のtACSで行動レベルでその影響を検出することは難しいと思われる。最終年度では,その効果を敏感に検出する課題の選択も含めて検証を行っていく。
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