研究課題/領域番号 |
18K03177
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中尾 敬 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (40432702)
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研究分担者 |
片平 健太郎 名古屋大学, 情報学研究科, 准教授 (60569218)
神原 利宗 広島大学, 教育学研究科, 助教 (90724120)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 意思決定 |
研究実績の概要 |
本研究は脳波と計算モデル解析を用いた実験から,自分の価値基準で選べるといった自由選択事態で,報酬反応が生起する人ほど内的基準が形成されやすく,内的基準による意思決定の際に外的基準からの影響を受けにくい (自分の価値基準で選べる) という仮説を検討することを目的としている。 本年度の当初計画では,昨年度に実施した実験パラダイムを用いて脳波実験を行うことを予定していたが,内的基準による意思決定時に外的基準からの影響を受けるのか,という問いについて行動実験により検討することを優先した。実験の結果,外的基準による意思決定を通して学習された価値の低さは内的基準による意思決定でも価値の低いものとして選択されにくくなることが明らかとなった(すなわち報酬確率の低かった刺激は好まれなくなった)。その一方で,外的基準における高い価値は内的基準による意思決定でも価値の高いものとして認識されているわけではないことが明らかとなった(すなわち,報酬確率の高かった刺激が好み判断時に初めて提示される新奇刺激よりも好まれるということはなかった)。このような結果は複数の実験データから再現性が高いことも確認した。このような関係性には刺激に対する自己関連性の認識が影響している可能性が考えられる。さらに,内的基準が不明確な事態での内的基準による意思決定では,不決断傾向が低い人ほど外的基準に沿って形成された価値を内的基準による意思決定に反映させやすいことも明らかとなった。不決断傾向の低さは,意思決定時に参照することが求められている基準の種類を明確に区別せずに,利用しやすい基準を参照する意思決定スタイルと関連していると考えられる。 本年度は,昨年度及び本年度の成果の一部が国際雑誌に掲載された。その論文の他にも英語論文を執筆し,現在投稿中である。また学会での発表も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度ではこれまでの成果を論文と学会発表という形で公表することができた。また行動実験を行い,本研究の仮説の重要な点について検討をすすめることができた。しかし,その行動実験の実施を優先したために,当初予定していた脳波実験までは実施することができておらず,その点においてやや遅れていると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,行動実験に加え脳波を測定することにより,報酬反応等の個人差を反映する脳活動と,内的基準による意思決定のパラメータとの関連を検討する。また本研究をすすめる中で,報酬反応以外の個人差がこれらの意思決定の関係に影響していることが明らかになりつつあることから,それらの要因についても合わせて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
Matlabの保守サービス代金は本研究計画以外の研究費から支出できたこと、また脳波実験を次年度に実施することとしたため次年度使用額が生じた。次年度経費と合わせて本研究計画の遂行(実験参加者謝金等)に使用する
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