研究課題/領域番号 |
18K03182
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研究機関 | 長野大学 |
研究代表者 |
佐藤 俊彦 長野大学, 社会福祉学部, 教授 (20322612)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 衝動性 / 遅延価値割引 / ラット / SHR / 脳機能イメージング / PET / オペラント条件づけ / 動画像解析 |
研究実績の概要 |
2018年度は、本研究の初年度であった。研究に着手するにあたり、次年度以後の研究活動の準備として、主に次の4点について取り組んだ。 1)小動物(ラット)を用いた衝動性の測定技法に関する情報収集。ユタ州立大学のMadden教授の研究室を訪問し、教授や大学院生等との情報交換を行った。Madden教授からは、遅延価値割引に関連したオペラント条件づけに関する実験の今後の実施に向けて有用かつ貴重な助言をいただいた。 2)オペラント条件づけ学習訓練中に見られるラットの不規則的行動[報酬獲得に直接つながらないような突発的な行動の発現、特に不規則的行動の頻発(バースト)]を定量的に測定する機器について、複数の業者に問い合わせて情報を収集した。この情報収集を通じて、実際に動物を装置に入れて動画を撮影しながらソフトウェアによる動物の検出の精度を確認する必要があるということが明らかになった。そのため、購入機器の選定については、次年度の動物納入時に、業者によるデモを改めて依頼し、適切な機器を購入できるよう十分に比較検討する予定である。 3)関連する国内外の学会に参加して(北米神経科学会、日本神経科学会、および日本動物心理学会)、本研究に関連した学術的知見、特に衝動性に関連した知見などの学術情報を中心に収集するとともに、本研究開始前に事前に取集した関連データを発表した。また、その他の学会(日本生理学会等)にも参加して、関連する学術情報を収集した。 4)次年度に計画している動物実験の実施に向けて、客員として所属する東北大学の施設等との間で施設利用に関する準備と調整を行った。次年度に向けて、実験の実施場所となる東北大学の動物実験委員会に動物実験申請ができる目途を立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物の衝動性を調べるための行動実験の実施に向けて、ユタ州立大学のMadden教授らが行ってきた遅延価値割引の課題を、本研究に適合させて実施すべく、研究方法に関する情報収集を行ってきた。米国ユタ州のMadden教授の研究室を訪問して情報提供を受けるとともに、国内外の学会に参加して衝動性に関連した行動研究の情報収集を行ってきた。 また、従来からの衝動性研究の枠組みを踏襲するだけでなく、報酬が提示される頻度が低い条件等でのフラストレーションに関連した不規則的な動物の行動を客観的に定量化する試験的な実験を準備している。この実験で利用できそうな機器やソフトウェアについて、複数の業者から情報を収集して比較検討しているところである。 その一方で、以下の2点について、当初想定していた以上に時間を要しており、慎重を期して作業を進めたことにより、研究計画に遅れが生じている。 1)実験の実施場所である東北大学での研究開始の準備に、当初の想定よりも時間を要した。そのため、動物を納入して動物実験を開始する時期を次年度に延期することとした。現在、動物実験の申請を含め、実験を開始する準備を鋭意、進めている。 2)動物の行動解析のために新規に購入する機器の選定について、実際に動物を装置に入れて行動させながら、ソフトウェアが動物の位置などを正確に検出できるかどうかを踏まえて比較検討する必要があると考えた。そこで、実際に動物を納入できるのは次年度以後になる見込みであったため、複数社の機器の比較検討を次年度まで継続し、動物を用いた際の機器の性能評価に基づいて、購入機器の最終決定を行うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度からの実験開始の目途が立っており、当初予定していた実験をできるかぎり多く実施して、研究計画の遅れを最小限にとどめたいと考えている。 他方、本研究の申請および採択時に予期できなかった事態として、研究場所となる東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターが、改修工事のため、2019年秋以後、1年以上利用できなくなることが、急遽決定され、同センターを一時的に利用できなくなる見込みとなった。この間、研究活動を継続する方略として、現在の計画では、東北大学の他の部局で実験施設を借用しながら、マウス等を用いた行動解析の実験を実施して、関連データを収集していくことにより、上記のセンターの改修による研究期間の時間的損失を最小限にとどめ、改修終了後に実験を再開できた後の研究活動に有用となる研究資料を継続的に収集していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の初年度である今年度中に購入を予定していた動物行動の画像解析の機器及びソフトウェアの選定について、時間をかけて慎重に検討すべきであると判断し、次年度に、実際に動物を導入しながら、ソフトウェアの動物検出の精度等について慎重に検討することとした。そのため、今年度に計上していた機器およびソフトウェアの購入に係る費用を今年度中に使用せず、次年度に繰り越すこととなった。
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