研究課題/領域番号 |
18K03183
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
福田 恭介 福岡県立大学, 人間社会学部, 特任教授 (30173347)
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研究分担者 |
吉岡 和子 福岡県立大学, 人間社会学部, 教授 (30448815)
早見 武人 岡山大学, 自然科学研究科, 講師 (60364113)
志堂寺 和則 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (50243853)
松尾 太加志 北九州市立大学, 文学部, 教授 (70229425)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Go/No-Go課題 / 瞬目抑制・発生 / 発達障害 / 予期 / ワーキングメモリー |
研究実績の概要 |
瞬目は,刺激予期時には抑制され,認知処理終了時に発生することが示されている。発達障害児は,次を予期して行動することや,行動を抑制することに課題を抱えていることが多い。そのため瞬目抑制・発生のタイミングにずれが生じると予想される。しかしながら,発達障害と瞬目発生・抑制との関連は解明されていない。本研究では,モグラたたきを用いたGo/No-Go課題時においてボタン押しの行動記録と瞬目記録を行い,大学生・定型発達児・発達障害児で比較を行った。 2019年度は,2種類の課題で実験を行った。1番目の課題は,ワーキングメモリー(WM)を必要とするが,視線移動方略を利用できればWMを必要としない課題,2番目の課題は,色の区別を必要とするが,多くのWMを必要としない課題である。 その結果,発達障害児は定型発達児に比べて,いずれの課題でもGo成績が低かった。このことは,発達障害児のほうがGo刺激を見逃す割合が高かったことを示唆している。また,小学生では,WMを必要とする課題1のNo-Go成績が課題2より低かったが,大学生では逆に課題1の成績が高かった。このことは,小学生は視線移動方略を利用できる割合が低いことを意味しており,小学生は色区別のみであれば,No-Goに対する正反応が増えることが示唆された。これらの行動指標と瞬目の抑制・発生がどのように関連するかは、2020年度に分析していく予定である。 さらに,実験中の視察によると,課題1において方略を身につけた実験参加者は片方のモグラが提示されると,直後に反対側に目を向けて次の出現を待ちかまえていた。このことを裏付けるデータが必要となる。そのためには眼球運動の指標が必要になり,今後,瞬目だけでなく眼球運動を指標としてデータを蓄積していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発達障害児・定型発達児・大学生の行動データおよび瞬目データをとることができ,現在分析中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在,行動データ(Go刺激への正答率,反応時間,No-Go刺激への正しい棄却率)を求めることができている。しかし瞬目分析については,ビデオ記録画像をもとに分析していく必要があり,進行中である。
ビデオカメラ動画像を観察していて,実験参加者の視線の動きはとても興味深く,さらに研究を進展させるのに大きな手がかりとなることを予想させるものであった。それは,年齢によって方略が異なっていたということである。連続して同じ位置からモグラが顔を出す場合,ボタンを押してはならない(No-Go)と求めていたが,小学生の多く,とくに低学年ではボタンを押した後,どちらからモグラが出てくるか視線を左右に振り向けていた。しかし,小学校高学年や大学生では,片方からモグラが顔を出したら,すぐに視線を反対側に向けてモグラが顔を出すのを待ちかまえていた。この視線の動きは,方略を利用できるかどうかを区別する大きな指標となる。しかしながら,現在のシステムでは眼球運動を計測できるまでは至っていない。本年度で,このプロジェクトは終了するが,来年度からは眼球運動と瞬目を同時計測することでさらに研究を推進していくことを計画している。
これにより,瞬目抑制・発生と視線の動きが,子どもの発達の理解に貢献するだけでなく,子どもの発達をさらに支援していくための手がかりになることが予想される。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画通り進めてきたが,若干のずれが生じたため。
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備考 |
子どもの発達の理解及び支援に関する研究プロジェクトのホームページを立ち上げた。ここでは,われわれが取り組んできた基礎研究及び臨床研究の紹介を行い,研究参加者を子ども研究員として募集した。地元の新聞にも取り上げられ,21名の小学生が参加し,WISC-IVの検査と実験を受けることができた。
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