研究課題
時間感覚はヒトの生活の営みにとって欠かせない基盤的能力であるが,その処理機構に関しては未解明な点が多い.本研究では時間幅認知の修正およびその定着における学習機序を検討した.時間幅の誤学習パラダイム(間違った時間幅を覚えさせる学習課題)を行い,誤学習後における時間幅認知の自然回復を時系列に分析した.その結果,誤って覚えた時間幅は約2時間後に元に戻った.さらに,磁気刺激を特定の脳部位(背外側前頭前皮質,側頭頭頂接合部,一次運動野のいづれか)に与え,可塑性を高めた後に誤学習を行い,学習効果の延長を検討した.その結果,背外側前頭前皮質に磁気刺激を与えた条件において誤学習の効果は少なくとも4時間程度延長した.この結果から,背外側前頭前皮質は新しい時間幅の記憶に関連していることを示唆した.またこの成果を論文化した(Neuromodulation, in press).次の研究ではパーキンソン病患者を対象にして行った.パーキンソン病は時間感覚に影響を与えていることが知られているが,本研究では患者の視床下核を操作することにより, 視床下核が時間感覚に決定的な役割を担っていることを示唆した.感染症の流行の影響で実験が遅れたが,無事に完了することができ,現在は論文を投稿中である.本研究の知見から,時間感覚のメカニズムに新しい示唆を与えることが期待できる.ヒトの時間感覚を修正・操作する試みから,時間感覚の障害を持つ疾患患者への臨床応用を提案したい.
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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