研究課題/領域番号 |
18K03190
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
大神田 麻子 追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (90725996)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肯定バイアス / ジェンダーステレオタイプ / コミュニケーションの発達 / Human-robot interaction / ロボット認識 |
研究実績の概要 |
本研究は、子どもが気遣いや信頼から集団内・外のロボットや大人の質問に「はい」と答える傾向(肯定バイアス)を示すか検討するものである。 これまで、幼児におけるロボットのさまざまな質問への回答傾向と、それが人間への傾向と同じか検討してきた。これらの研究の一部は2021年度に国際学術雑誌に採択された。また、本研究ではロボットを集団内・外の他者と認識させる条件の1つとして性別が同じであることを想定していた。そこでロボットの性別について、幼児と大人に聞いたところ、5歳ごろから圧倒的に男の子であるという回答が増え、その傾向は大人で最も強いことが分かった。この研究は英語論文として2021年度に国際学術雑誌に採択された。 2021年度も引き続き、コロナの影響で対面の実験が実施できなかったため、オンラインで実施できる研究を行なった。3歳から7歳の幼児と成人を対象に、ロボットの性別認識と、その性別認識が集団内の仲間認識や、ジェンダーステレオタイプに拡大されるかについて調べた。数種類のロボットと、ロボット以外の人工物の性別を聞き、さらにロボットと人間の子ども(男女)の友達、遊びたいと思っている相手を、男の子と女の子のイラストから選択させた。また「強い」「かしこい」など、男性に付与されやすい特性をロボットと成人(男性女性)、子ども(男児女児)に付与するか調べた。その結果、ロボットは男の子であるという認識は4歳ごろから芽生えることがわかった。成人は、ロボットは男の子の友達で、男の子と遊びたいと思っていると回答し、成人男性とロボットに「強い」「かしこい」という特性を付与する傾向を示したが、幼児は、このような傾向は示さなかった。ロボットは男の子という性別の認識は幼児でも行うが、少なくても7歳ごろまでは、その認識は表面的なラベリングである可能性がわかってきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響と、予備的に行った調査結果により、当初に計画していた実験内容と実際に実施した実験内容は少し異なるものの、これまで、幼児は会話が可能なロボットに対して(微細な違いはあっても)人間に対するのと同じような態度を示すことを明らかにしてきた。そしてその内容を論文にまとめ、国際学術雑誌で発表した。また、ロボットが幼児(と成人)にとってどのような存在なのか(同じ性別の仲間と思うことができるのか、あるいは人間と同じように性別があり、それはジェンダー観にまで拡大するのか、例えばロボットは男の子であるのであれば、男の子の仲間と認識されるのか、男性らしい特性を持つと考えられるのかなど)についても、興味深い結果が得られつつある。この研究の一部は、国際学術雑誌において発表した。2020年度、2021年度は、オンラインでの調査を行うことしかできなかったが、その制約がある中で、意義のあるデータを得られている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、対面の調査も予定している。幼児にロボットを実際に見てもらう、あるいは対面の大人への反応とロボットへの反応を比較するため、対面の大人への質問に回答してもらう。実際に目の前にいるロボットに回答する、あるいは実際の人間に回答するという実験は、オンラインでは実施できず(ビデオチャット等では、ビデオの影響による要因が排除できない)、対面で実験する必要があるが、対面の実験は2020年度以降、実施できていないため、今年度に可能であれば実施する。ただ、対面実験が実施できる時期はコロナの蔓延状況にも左右されるため、オンラインでできる調査も並行して準備する。たとえば、本研究計画では、ロボット・人間が集団内あるいは集団外の他者と認識させられた場合に、幼児が2つの条件のロボット・人間に態度を変える調べるものであるが、このうち、集団内・集団外の他者への幼児の態度について、追加的に調べる。例えば、ロボットやロボット以外で顔のある対象物(人形など)の、どのような差異(見た目や言語など)に注目し、どのような特徴がある場合に、集団内の他者と認識する(選好する)か調べる。そして、それが実際の集団内の他者(人間の友人)を選択する場合と同じか異なるか検討する。こうした調査は、たとえば2つ以上の異なる写真や動画を提示し、1つを選択させるという方法でも実施できるため、対面だけでなく、オンラインでデータを収集することが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で国際学会などが開催されず、旅費等を使用することがなかったため。 次年度は、オンラインでの調査を実施するなどを予定している。
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