研究課題
本研究の目的は、刺激がどちらの眼に入力されたかに関する情報である由来眼(eye of origin)情報に焦点をあて、高次視覚情報処理における役割を解明することである。これまで由来眼情報は視覚処理の初期段階で両眼の情報が統合される際に失われると考えられてきたため、高次視覚への影響は全く研究されてこな かった。本研究は、視覚探索における注意捕捉、試行間プライミング、潜在学習などの実験パラダイムを応用して、注意や選好といった高次視覚処理における由 来眼情報の役割を系統的に検討することが目的であった。本研究によって、高次視覚においても由来眼情報が保存され、認知・行動に影響を及ぼしていることが 明らかになればこれまで想定されていなかった脳内メカニズムの存在を示すことになり、ヒトの視覚系の解明に貢献できると考える。昨年度に引き続き,視覚的注意処理だけではなく,幅広い認知メカニズムにおいても由来眼情報が影響する可能性について検討を行った。両眼に異なる顔を2つ入力すると、2つの顔が融像して別の顔が知覚される現象に着目し、両眼像の融合に刺激の物理的特性や,観察者のパーソナリティ(顕在的・潜在的自尊心)がどのような影響を与えるかについて検討を行っている。また,近年注目されている統計モデリングの手法を導入し,視覚的注意の制御に関する検討も進めている。これらの研究結果は、今後学会発表・論文などを通して国内外に発表し、さらに検討を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究開始当初には想定していなかった現象が発見されたため、研究計画に若干の変更が必要となった。そのため,実験刺激の作成やパラメタ設定に一定期間を要したが,研究全体の進捗状況としては概ね順調であると考える。
3月に予定していた実験がコロナウィルス禍のためすべて中止になり、再開の見通しも立っていないため,今後研究計画の修正が必要になるかもしれない。オンライン実験などで対応が可能か現在検討中である。
当初予定していた実験がキャンセルになったため,実験参加者への謝金額が減少し,残高が発生した。翌年度以降に実験参加者への謝金などに使用する予定である。
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Attention, Perception, & Psychophysics.
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