2022年度は以下の4つの研究を行った。 (1)催吐剤であるシスプラチンの注射により、ラットが石膏チョークをわずかではあるが食べること、石灰チョークはほとんど食べないことを実験的に見出した。この結果から、シスプラチンの注射によって生じる悪心の性質と異食行動の関連について考察した。さらに、この結果を、過去に実施した実験結果(催吐剤である塩化リチウムの注射によって、ラットがカオリン粘土だけでなく、石膏の塊や石膏チョークを少量、石灰チョークを微量食べる)とまとめて論文化して国際誌に投稿し、年度内に掲載された。 (2)催吐剤である塩化リチウムの注射によって、ラットはカオリン粘土だけでなく、ゼオライト粘土も少量ではあるが食べることや、カオリン粘土も種類(産地・メーカー)によっては摂取量があまり多くないことを見出した。 (3)前年に引き続き、回転カゴ走行によって生じる悪心と催吐剤である塩化リチウムの注射によって生じる悪心について、ラットの雌雄差を、カオリン粘土摂取量および味覚嫌悪学習の大きさを指標として調べる実験を複数回実施した。 (4)申請者らは、ラットが水泳前に摂取した味覚溶液を嫌悪することを2004年に発見し、その後この水泳性味覚嫌悪学習に関する実験を重ねてきた。水泳性味覚嫌悪学習はラットでは再現されるが、マウスでの実証実験は失敗の繰り返しであった。しかし、2022年度に実施した実験技法の改善によって、マウスでも水泳性味覚嫌悪学習を示すことを確認した。 研究期間全体(2018~2022年度)を通じて実施した研究の成果は以下の通り。(1)ラットでもマウスでも、走行や水泳が悪心を喚起する。これは直前に摂取した味覚への嫌悪が形成されることから推測できるが、ラットの場合は粘土を食べる異食行動も示す。(2)ラットで見られる異食は、カオリン粘土以外でもゼオライト、石膏、石灰でわずかながら生じる。
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