本年度は、主観的報酬情報の生成過程を解明するために行われた本研究の結果をまとめる作業を行った。サル二頭を同時に用いた社会的条件づけ下において、視床下部外側野-内側前頭前野間および視床下部外側野-中脳ドーパミン神経核間の神経情報の流れ、また3領域の領域内での神経応答を確認したところ、内側前頭前野→視床下部外側野→中脳ドーパミン神経核というトップダウンの流れが明らかとなった。さらに、視床下部外側野の神経活動を可逆的に阻害したところ、他者の報酬情報に影響を受けなかったことから、他者の報酬情報を自己の報酬の価値づけに統合するという主観的報酬情報の生成過程において、視床下部外側野の役割が非常に重要であることが明らかとなった。本研究によって初めて明らかとなった霊長類皮質―皮質下の詳細な自己と他者の報酬情報に関する神経活動や情報の流れは、社会的動物とまで呼ばれるヒトの社会性の神経基盤解明において重要な知見となる。 以上をまとめた結果は、現在、原著論文として投稿予定である。また、関連レビュー論文が1報、Neurosci Biobehav Rev誌に掲載された。学会活動としては、日本心理学会および日本薬理学会の年次大会にて招待講演を行い、日本神経科学大会にてシンポジウムを企画し口頭発表を行った。また、Tsukuba University Inauguration Symposium for the Neuroscience Programに招待され、講演を行った。加えて、4つのワークショップや研究会にて口頭発表を行った。さらに、大阪府北野高校OB会にて講演を行い、NTT機関紙付属「ふるえ」誌にインタビュー記事が掲載されるなど、研究内容の普及にも努めた。 このように、本年度の研究計画は滞りなく遂行された。
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