研究課題/領域番号 |
18K03200
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
後藤 泰宏 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40312425)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 数論的代数幾何 / 形式群 / カラビ・ヤウ多様体 / 楕円型ファイブレーション / 国際研究者交流(カナダ) |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、正標数の体上定義され、K3曲面や楕円曲線によるファイブレーションを持った3次元カラビ・ヤウ多様体の形式群の特徴を調べることである。考察の中で現れる形式群はいずれも1次元の形式群であり、高さと呼ばれる量によって分類される。本研究においては、各ファイバーの形式群と本体の形式群との間にどのような関係性があるかを調べた後、ファイブレーションを持つ3次元カラビ・ヤウ多様体の形式群の高さがとりえる値について考察する。 研究初年度の平成30年度は、楕円型ファイブレーションを持つ3次元カラビ・ヤウ多様体を研究対象とした。重さ付きDelsarte型多様体を用いて具体的な計算を行いながら、各ファイバーの形式群と本体である3次元カラビ・ヤウ多様体の形式群との関係性を考察した。研究協力者の由井典子氏(カナダ・クイーンズ大学教授)との2回の打ち合わせ(東京とカナダ)を通して、平成30年度は次のような成果を得た。 (1)楕円型ファイブレーションを持つK3曲面に関する既存の理論(例えば、ArtinやBeukers‐Stienstraの結果)を再吟味し、楕円曲線の形式群の係数を1変数多項式から2変数多項式へ拡張することによって、上記の結果を部分的に3次元カラビ・ヤウ多様体に拡張した。(2)Delsarte型多様体やBorcea-Voisin型3次元カラビ・ヤウ多様体を用いて、楕円曲線の形式群の高さと3次元カラビ・ヤウ多様体の形式群の高さとの関係性を不等式の形で記述し、計算ソフトMagmaを利用して、それぞれの形式群の高さを具体的に計算した。 また、平成30年12月に「函館数論幾何ワークショップ2018」を函館で開催し、研究発表を行うとともに多くの研究者と情報交換を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、楕円型ファイブレーションを持つ3次元カラビ・ヤウ多様体を研究対象とし、既存の結果を3次元に拡張することと、各ファイバーの形式群と本体である3次元カラビ・ヤウ多様体の形式群との関係性を調べることを目標としていた。既存の理論を楕円型ファイブレーションを持つ3次元カラビ・ヤウ多様体に拡張するという目標に対しては、いくつかの克服すべき課題を残したものの、おおむね当初の目標を達成することができた。また、ファイバーと本体の形式群との関係性については、いろいろな種類の3次元カラビ・ヤウ多様体を用いて、ファイバーと本体の形式群の高さにおける関係性を求めることができた。さらに、平成30年12月に「函館数論幾何ワークショップ2018」を函館で開催することができたことと、国際研究集会等において2度の研究発表を行うことができたことから、研究全体としては、おおむね順調に進展していると判断する。(なお、上記ワークショップは平成31年度に開催を予定していたものであり、当初平成30年度に予定していた「Workshop on Calabi-Yau Varieties and related topics」については平成31年度の開催に変更した。)
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今後の研究の推進方策 |
今後もおおむね当初の計画通りに研究を進める予定である。研究計画の2年目に当たる平成31年度は、K3曲面によるファイブレーションを持つ3次元カラビ・ヤウ多様体を扱い、各ファイバーの形式群と本体の形式群との関係性を考察する。一般に、K3曲面の形式群を具体的に記述することは難しいので、本研究では、多様体のゼータ関数を利用する研究方法を取り入れ、K3曲面と3次元カラビ・ヤウ多様体の形式群に適用することとする。現段階で既存の理論の再吟味と拡張に少し遅れが生じているので、これに係る問題の解決が難しいようであれば、研究の方向性を少し変更してBorcea-Voisin型多様体やデルサルト型多様体といった具体的な3次元カラビ・ヤウ多様体の考察に焦点を当てることとする。それによって、形式群をより具体的かつ詳細に分析することが可能となる。 これまでと同様、計算ソフトMagmaを使った計算機実験も行う計画である。さらに、「Workshop on Calabi-Yau Varieties and related topics」を平成31年8月に函館で開催し、研究発表を行うとともに多くの研究者と情報交換を行うことを計画している。 研究協力者の由井氏とは、平成31年度もメールによって定期的に連絡を取り合い形式群に関する助言を求める。由井氏との集中的な打ち合わせは、函館と北米で1回ずつ行う予定である。成果発表は、国内と国外で1度ずつを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度には185,474円が繰り越されることとなった。その主な要因は、パソコンの更新を延期したことと、それに伴って計算ソフトMagmaのライセンス更新を遅らせたことによる。パソコンの更新を延期したのは、実行中の計算をできる限り継続させたかったためである。また、謝金を伴う研究依頼の必要も生じなかった。上記繰越金については、平成31年度にパソコンの購入及び計算ソフトMagmaのライセンス更新に充てたい。すでに配分予定の次年度及びそれ以降の研究費については、当初の予定通りに使用する計画である。
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