アイゼンシュタイン級数の値の代数的独立性を与えたYu.V.Nesterenko の定理(1996)は応用が豊富であり、関連する保型形式の特殊値の超越性や代数的独立性に関する結果を導く。例えば、D.BertrandやD.Duverney-西岡(啓)-西岡(久)-塩川は、Nesterenkoの結果を応用し、テータ零値およびそれらの導関数の特殊値の数論的性質を明らかにした。特に、級数Σ2^{-n^2}の値は超越数である。一方、整数k>2に対する級数Σ2^{-n^k}の値の超越性については現在も判明していない。最近、V.Kumar(2019)はkroneckerの稠密定理を援用し、上記の数を含むようなある種の空隙級数の数集合に対して、有理数体上での線形独立性を証明した。 本研究では、Kumarの定理において課されていた条件を取り払い、より広いクラスの数集合に対する線形独立性を導くことに成功した。さらに、Kumarが課した条件そのものについても詳しく検討することによって、ある種の空隙級数については任意の部分和に置き換えても同様の結果が成り立つことを確かめた。証明は、S.Chowla(1947)、P.Erdos(1948)らによる連立合同式を利用した空隙の発見法や、K.Mahler(1953)による不定方程式の解の有限性に関する結果を用いるものであり、上述のKumarの手法とは全く異なる。本結果は論文としてまとめ現在投稿中である。以上の研究成果は、村上慎太郎氏(弘前大学)との共同研究によるものである。
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