研究課題/領域番号 |
18K03202
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
千田 雅隆 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (00451518)
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研究分担者 |
三枝 洋一 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (70526962)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Gross予想 / 肥田理論 / 例外的零点予想 / p進L関数 / L不変量 / Hecke指標 |
研究実績の概要 |
今年度は主に台湾の中央研究院のMing-Lun Hsieh氏と共同で虚二次体上のHecke指標のp進L関数の特殊値について研究を行い,Hecke指標が非自明な環類指標(有理数体上に制限すると自明になるような指標)の場合にGross予想の類似の公式が成り立つことを証明した.Gross予想は総実代数体上のHecke指標に伴う円分p進L関数のs=1での特殊値(微分値)を総実代数体のp単数を用いて記述する予想であり,Stark予想のp進類似と考えることができる.近年のDarmon-Dasgupta-PollackやVentullo,Dasgupta-Kakde-Ventulloらの仕事によりGross予想の研究は大きく進展しており,その中で彼らはEisenstein級数と尖点形式の合同を用いてGaloisコホモロジーの元の構成をすることでGross予想にアプローチしている.Gross予想の類似をCM体の場合にも考えるというのは自然な問題であるが,今回の研究では特に虚二次体の場合にCM保型形式と非CM保型形式の間の合同を用いることでGaloisコホモロジーの元を構成し,Gross予想の類似をいくつかの仮定のもとで証明することができた.同様の公式はBuyukboduk-坂本により虚二次体の類数がpで割れない場合に全く別の方法を用いて示されていたが,今回の研究によりその条件を外したことになる.さらに今回証明した公式にはGrossレギュレーターと呼ばれる,虚二次体の単数から定義される重要な不変量が現れるが,この不変量がBenoisによって定義されたL不変量と一致することも証明した.これは今回証明した公式がPerrin-RiouやBenoisによって定式化されたp進Beilinson予想の枠組みで捉えられることを示しており,今後の研究の方向性を示唆するものになっていると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は新型コロナ感染症の影響のため,通常の形態の研究打合せや研究集会・セミナーへの参加がほとんど出来ず,共同研究者や関連する分野の研究者と直接十分な時間をかけて議論が行えなかったことから,予定よりも研究を進めることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,もしコロナ感染症の状況が改善した場合は共同研究者や関連分野の研究者と十分時間をかけて議論するため,積極的に訪問・招聘を行い,さらに関連分野の研究集会・セミナーなどに活発に参加することで研究を促進させたい.状況が変わらないようであれば,現在はオンラインで研究交流を行う手段も改善されてきているので,共同研究者とのオンラインでの議論やオンライン研究集会などへの参加を行うことで研究を進めていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響で研究打合せや研究集会参加のための旅費に使うことができず,物品購入費のみの使用となったため,次年度使用額が生じた.翌年度に新型コロナ感染症による影響が少なくなった場合は共同研究者との打合せによる出張,関連する研究分野の研究者の招聘や研究集会への積極的な参加のために次年度使用額を利用したいと考えている.
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